胎動篇《二》ー033
鬼女は怒りで肩を震わせ、其れに呼応する様に鬼火の数も増えていく。
綾狐
「怒り狂ったお前は…」
鬼女
「…うな」
綾狐
「自分の子を…」
鬼女
「…言うな…ッ」
綾狐
「"喰い殺した"ンだろ?」
鬼女
「言うなあああああぁぁぁぁッ!!!!」
―びしっ。
鬼女の額が割れ角が姿を現し、双眸は真紅に染まり、髪は乱れ、牙が伸び、爪は獣の様に鋭くなる。
綾狐
「お前は自分の子を喰い殺し、逆恨みから鬼にまで成った挙げ句、力を受け継いだ娘を殺す為に"鬼堕とし"を始めた」
鬼女:美葛
「おまえぇぇぇ…ッ」
綾狐
「そして遂に娘を見つけ出したお前は、娘が身を寄せていた家の父親を殺し、命乞いをしてきた息子と其の祖母を鬼に変え、娘に執拗な嫌がらせを続けた」
次第に切々と語る綾狐にも変化が起きる。
怒りを露わにした顔―。
瞳は獣の其れに変わり、口は裂け鼻もとには皺が寄り牙が剥き出しになる。
そして、綾狐の周りには狐火が舞だす。
綾狐
「お前が鬼に成るのは構わンさ。だが…其の自己中心的欲望に周りを巻き込ンでじゃねェよ…ッ」
ほぼ狐の顔に変わった綾狐の喉からは低く唸る声が漏れている。
鬼女:美葛
「くっくっくっ…ふふっ…半妖の貴様に何が出来ると言うのだ!?」クスクス
綾狐
「…何?」ピクッ
???
「…落ち着いて下さい。綾狐さん」
鬼女:美葛
「!!」
綾狐
「!?」
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