胎動篇《二》ー032

鬼女
「…彼の娘を渡せ…」

鬼灯姫
「娘?お前が堕とした娘か?」

鬼女
「違う…もう一人娘が居ただろう…"屏風の裏に"」ニヤリ

綾狐
「…」

鬼灯姫
「彼の娘がどうかしたのか」

鬼女
「…わらわは寄越せと言っている」

綾狐
「殺されるのを判っていて渡せるかよ。つゥか殺されなくてもお前には渡さン」ククク

香紗
「綾狐殿?」

鬼灯姫
「稲荷、此の鬼女を知っているのか」

鬼女
「わらわはお前の様な小さき者なぞ知らぬ」

綾狐
「"鬼神 美葛(おにがみ みくず)"。鬼神村(おにがみのむら)、村主家(すぐりけ)の娘で鬼神家(おにがみけ)当主の正妻だ」

鬼灯姫
「…鬼神村の女か」

鬼女
「何の事であろうなぁ…?」クスクス

綾狐
「お前は当主との間に男児を産ンだが其の子に鬼神の力は受け継がれていなかった。取り巻きに調べさせればなンてこたァない。当主は幼なじみの侍女との間に女児をもうけていた…。力は其の女児に受け継がれていたンだ」


綾狐が語り始めると鬼女の顔に怒りの色が浮かび上がる。

鬼女の変化を気に留める事も無く綾狐は語り続けながら庭へと降り、鬼女の目を見据えた。

綾狐
「良家の娘に生まれ、村の権力者に嫁ぎ、男児も産まれた…当然自分はやりたい放題で楽して生きていけると思っていた。なのに男児は力を持っていなかった。当主の後継ぎの条件は"力を受け継いでいるか否か"…だろ?」
 

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