胎動篇《二》ー029
直ぐに右手は抜かれた。
其の手には揺らめく青い焔が捕まれている。
鬼灯姫は其れを空間から取り出した籠に入れ自分の横に置いた。
鬼灯姫
「…上手くいけば、程なくして鬼が来るわ。其処の二人は静かにしていなさいね」
香紗
「綾狐殿は鬼灯姫の指示に」
綾狐
「ン」
月子
(…声を出してはいけない…腕の中から動いてはいけない…静かにしなくちゃ…っ……!)ビクッ
ぎゅう。
威介
「…」
月子
(…お師匠さま…?)
不安でただ注意された事を頭の中で繰り返し、緊張していた月子に心配するなと言わんばかりに威介が抱いていた腕に力を込めた。
月子
(……お師匠さまあったかい…)
―ずんっ。
月子
(!!?何、息が…!?)
威介
「…」
月子
(?お師匠さま気付いてない…っ!?)
鬼灯姫
「…来た」
―――きしっ。
――きしっ。
―きしっ。
きしっ。
………。
月子
(…何か、居る…!)
障子の隙間から青白い指が侵入して来た、刹那―
勢い良く障子が左右に開かれる。
月子
(…女…の人…?)
鬼女
「…」
月子
「っ!?」ビクッ
目が合った―!?
ひた。
ひた。
ひた。
鬼女
「…」
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