胎動篇《二》ー025

鬼灯姫
「…其処の貴方、天納の師匠?屋敷の部屋を一部屋、出来れば庭に面してて広い部屋貸してくれないかしら」

威介
「部屋?俺に言われてもな…将右衛門様に聞いてみないと」

綾狐
「…急ぐのか?」

鬼灯姫
「此の娘に怨鬼に成る程の怨み、妬みなんて無いわ。在るのは歪んだ憧れよ」

威介
「それと部屋と何の関係が…」

天納
「"鬼堕とし(おにおとし)"っす」

威介
「鬼堕とし?」

鬼灯姫
「鬼が人間を故意に鬼へと変わらせる事の総称を鬼堕としと呼ぶのよ」

月子
「人間を鬼に…」

鬼灯姫
「其の行為自体に何ら意味は無く、ただの暇潰し程度の遊びね」

威介・月子
『!?』

天納
「でも、この人に植え付けられた"鬼火"からは激しい怨みの匂いがするっす…」クンクン

綾狐
「と、いうことは?」

鬼灯姫
「此の娘を鬼に堕とした鬼は遊びではなく、目的を持って鬼堕としを行った可能性が高い。だから部屋に娘を寝かせておびき寄せるのよ」

威介
「おびき寄せてどうすんだよ?鬼退治でもするのか?というか天納もお前も何なんだよ!?」

綾狐
「説明は後にしよう。娘の様子が変わった。急がないと大変な事になりそうだ」

鬼灯姫
「鬼火が宿り主の異変に気付いたのよ。余り時間が無いわ」

綾狐
「お師様、此の屋敷で一番広い部屋は其の角の部屋でしたね?俺が依千神殿に説明しに行くから案内してください」
 

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