胎動篇《二》ー024

月子がそっと目を開けると目の前には綾狐ではなく、天納の背中があった。


綾狐
「だから気を付けろと言っただろ?ン?」

月子
「…ご、ごめんなさい…」

綾狐
「ま、彼奴は"特殊"だから許す」

月子
(特殊?)

天納
「月ちゃん大丈夫っすか?」

月子
「…天納くん…大丈夫だよ」

天納
「師匠はそこを絶対動かないでくださいっす」

威介
「天納?」


天納は女の手首を掴む手に力を込める。



「ぐっ…!離して!離しなさいよっ!」


途端、女の声に生気が戻り、其の瞳には涙が浮かんでいる。


天納
「まだ完全には堕ちてないっすね」


「?どういう意味よ…っ!!!」


???
「"怨鬼(えんき)"って鬼に成りかけているの。天納、其の儘掴んでいなさい」


月子
(誰だろう?綺麗な子…)


綾狐の後ろから派手な着物を着た少女が天納の方へと歩き出す。


綾狐
「天納の知り合いか?」

天納
「っちょっと後にして欲しいっす!」

鬼灯姫
「…私は鬼灯姫(ほおずき)。魂を導くモノよ―。稲荷の姫様」

綾狐
「鬼灯姫?」

天納
「鬼灯姫ちゃん早く…!」


「…憎い…ニクい…ニくイ…ニクイ…ッ」グググ…ッ


女の口からは老若男女のどれとも、明らかに人間の声ではない声が低く唸る。

鬼灯姫は何処からか赤黒い不思議な形の鈴(りん)を取り出すと女の鼻先で鳴らす。



「!」


鈴の音を聴いた女はどさりと昏倒した。
 

[ 77/154 ]

|

し お り を 挟 む

ペ ー ジ 一 覧 に 戻 る

目 次 に 戻 る


←Novel

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -