胎動篇《二》ー017

【綾狐・飯綱の部屋】




………

…………………


綾狐
「……寝れンな…」フム

飯綱
「…」スースー

綾狐
「…」ナデナデ

飯綱
「…」ン


綾狐は布団から出ると羽織りを羽織って部屋を後にする。


綾狐
「さっぶっ;;;……!」


廊下に出た途端、景色に目を奪われる。


降り積もった雪の中、庭に降りて月を見上げる後ろ姿。


白銀の世界に降り注ぐ月明かりに照らされて白く浮かび上がる輪郭。


音の無い夜の静寂。


まるで浮世絵の様に美しい庭の景色―。


―きしっ。


庭の方へと踏み出した時、縁側が小さく鳴った。

月を見上げていた景色の一部が振り返る。


香紗
「…綾狐殿?」

綾狐
「おう。綺麗だな」

香紗
「あぁ。綺麗な月だ。彼だけ雪が降っていたのにな」

綾狐
「違う」ククク

香紗
「?」


綾狐は庭へと降り、香紗の隣に並ぶ。


綾狐
「月と、叢雲と、雪と、柳凪殿だよ」


綾狐は順に指を指し、香紗に指先を向ける。


香紗
「俺?」

綾狐
「そ。白い雪と白い柳凪殿を月明かりが照らして、何とも言えない景色を作り出してンだな」

香紗
「俺も景色の一部?」

綾狐
「…ところで」

香紗
「ん?」

綾狐
「柳凪殿は"風の丘"って知ってるか?」

香紗
「…」
 

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