胎動篇《二》ー012

綾狐はやたら大きな荷物を掴むと威介の後に続いて庭に降りる。


すみれ
「お茶…」

将右衛門
「おぉ。すみれお茶を持って来てくれたのか」

すみれ
「はい。あの八笠女様とあの方は」

将右衛門
「放っておきなさい。あの二人は昔から何かあるとお互いに納得のできる方法で解決するのです」

月子
「…;;;」

すみれ
「はぁ…」


一方、庭では


威介
「相変わらずそんな忍べ無い武器使ってんのか?」


綾狐は自身の背丈より少し小さいぐらいの鉄扇を片手で肩に担いでいる。


綾狐
「忍ぶ必要の無い戦ばかりなンで。お師様こそ未だにそンな訳の解らない武器を使ってンですか?」


威介の腰には鞭がぶら下がっている。


月子
「姉さまのあのおっきな扇子みたいなのは?」

香紗
「鉄扇だな。異様にデカいが」フム

将右衛門
「あれは綾狐殿にしか扱えない"特注"の鉄扇なのです」

月子
「特注?」

将右衛門
「人間はまず持ち上げることができません」

月子
「Σえ゙っ!!」

香紗
「…片手で肩に担いでいるな…」

天納
「綾狐さますげぇっすね…」

将右衛門
「綾狐殿だからこその武器ですね」フフフ

すみれ
「凄いです。が、初日から暴れられては迷惑です」スッ

将右衛門
「すみれ?」

すみれ
「"蠱惑《壱解》"(こわく《いっかい》)」


庭に向けて広げたすみれの両手から無数の黒い影の揚羽蝶がふわりふわりと飛んでいく。


綾狐
「ン?」

威介
「Σげっ;;;」ビクッ


揚羽蝶が二人に群がる。

威介は咄嗟に近くの池に飛び込んだ。

すると威介に群がっていた揚羽蝶が綾狐へと向かう。


綾狐
「…」

威介
「避けろ綾狐っ」

月子
「え?え?」


やがて綾狐は揚羽蝶に覆い隠された。


どさり。


威介
「!」チッ

月子
「え…?」


綾狐を覆い隠していた揚羽蝶たちが風に溶けて消えていく。

残されたのは顔から血の気が引き、胸を押さえ雪の上でうずくまる綾狐。


月子
「…姉…さま?」フラ…

すみれ
「!あ…」


「触るな」

月子
「え?」



烏が喋った?



ぼふん。



月子
「Σ烏が姉さまになった!?;;;」ビクッ

綾狐
「秘技"変化の術"〜。すげェだろ?」カッカッカッ

月子
「良かった〜…あれ?でも、じゃあこの姉さまは?」
 


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