015

 男が木戸から離れる気配がするとシグレは調子を変えて再び猫の声真似をした。


ホームズ
「さぁ、早くおいで。ジジイはひとりで退屈しているのだ。話し相手になっておくれよ」

シグレ
「…降りるぞ。付いて来い」コソ…

アオイ
「??あぁ」コクリ


 身軽く開けられている木戸にシグレが飛び込むとアオイも同じように部屋に飛び込んだ。


 香の匂いのする部屋。


 飛び込んだ姿勢のまま辺りをきょろきょろしていると上から声が降ってきた。

 穏やかに微笑む老人。


ホームズ
「今夜は随分と愛らしい連れが一緒だなぁ。なぁ?シグレや」ニコニコ

シグレ
「オズワードから手紙を預かってる」

ホームズ
「どれ。預かろう」

アオイ
「オマエがホームズ?」

ホームズ
「うん。そうじゃよ」ニコニコ


 ホームズはまたにこりと微笑むとオズワードの手紙へと視線を落とす。


ホームズ
「…用件は分かった。アオイ、じゃの?父親からの手紙を見せて貰えるかな?」

アオイ
「あぁ、これ」

ホームズ
「うむ。立ち話もなんだ。ふたりともこっちに来て座りなさい」


 ふたりは手招きされるままソファーへと座る。


 正面に座ったホームズは険しい顔で手紙に目を通していた。


ホームズ
「…ボー(ボルドー)は生きていたのか…助けてやれなんだなぁ…済まないなぁ…」
 


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