伝説と世界ー002
【ヤミ】
それは何の前触れ無く突然世界に現れ、溢れた。
世界を喰らう異形の化け物。
その姿、醜悪にして吐き気を催す悪臭腐臭を撒き散らす。
それはかつての友であり、親であり、子や恋人であったもの。
生体の関節が弾け飛び、本来有り得ない体組織が外れた関節同士を繋ぎ、関節の可動域を無視した動きをする。
しかし、死体が化け物に成り変わったモノではなく、生きた生物の関節が突然弾け、肉は腐り、一瞬にして化け物へと姿を変えるのだ。ヤミに成る前兆は無く、成ったモノ達に共通点は無い。
また、ヤミが長く居着いた場所は草木が枯れ腐り、水でさえも毒水へとなり《死地(デスフィールド)》と呼ばれ、まさに死んだ土地へと変わり果てた。
これにより、瞬く間に生物は絶滅の危機を迎える。
原因が解らない故にヤミは病気や黒魔術などが原因だと憶測が飛び交い"ヤミ"と呼ばれるようになった。
物理攻撃は効かず、魔法もほんの少しだけヤミの再生能力を鈍らせるだけ。抗う術は尽きようとしていた。
その存在理由も発生原因も生態も何もかもが謎のヤミと愛おしい者が突然化け物に成り果てる地獄の世界。
そして、止まらない魔力の消失―。
消滅(ロスト)までのカウントダウンが始まった人間達は祈った。
例えそれが大昔の夢物語(フェアリーストーリー)だったとしても、絶望の底に堕とされた者達はそれに縋るしかなかった。
ヤミを滅ぼす《勇者》の出現を―。
伝説と世界_終
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