少女と手帳ー001

 シュロットの去った執務室。オズワードは陽が暮れてからようやっと報告書の作成を始めた。オズワードの傍らには椅子を持ち寄ったシグレが静かに本を読んでいる。

 執務室にはペンを走らせる音とページをめくる音だけが静かに鳴っていた。


―コンコン…。


オズワード
「…どうぞ」カリカリ…


 顔を上げないままに声を掛けると「お邪魔しま〜す」と気の抜けた声を出してルイズが部屋に入ってきた。


ルイズ
「昼間の女の子が訪ねて来ましたよ。オズワード」

オズワード
「! あぁ、よく来てくれたね。こちらにどうぞ。ルイズも」ニコ

シグレ
「…! てめぇは」


 ルイズの後ろでドア口に立つのは背中に大きな荷物を背負った昼間の来訪者。

 黒く長い髪にオニキスのような瞳で猫目の小柄な子。ぱっと見男の子と言っても判らないやんちゃそうな子だった。


 その姿にシグレは警戒をし、切れ長の目は鋭くなって女の子を監視する。


シグレ
「…」

オズワード
「警戒しなくていいよ。私が呼んだんだ」

シグレ
「は?」

ルイズ
「今シュロットがお茶を淹れに行ってくれてるよ」

オズワード
「すまないね」

ルイズ
「いいです。いいです。シュロットは家事するの好きみたいだからね」
 


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