壊れる常識ー001

 帰らずの森での単独作戦を終えたシグレは聖都・障壁門に向けて樹上を枝から枝へと飛び移りながら移動をしている。

 移動をしながらシグレは森に違和感を感じた。


 静か過ぎる―


 いつもならばヤミの鼻を突く悪臭が森を満たしているのだが、今はそれが感じられない。それどころか草花の香りが嗅ぎとれるほど空気が澄んでいた。


シグレ
(…ヤミが居ねぇ…)



静かなのはいいが静か過ぎる。

魔警団(魔装警師団略称)にここまでの浄化能力なんて無ぇはずだが―…



 様子を窺いながら進むと何かが鼻を掠めた。


 "肉の焼け焦げる臭い"―


 そしてそれは突如として視界に飛び込んでくる。木の少ない少し開けた場所。


シグレ
「…! これは。ヤミが消し炭になってやがる…。数は…10、いや…もっと居るか…?」


 周囲の草木諸共真っ黒に焼け焦げたヤミの死骸。かなりの広範囲にその焦げと死骸の数々は広がっている。その光景にシグレは得体の知れない恐怖を覚えた。有り得ない事だった。


 何故なら今までのどんな戦歴の師団員でも偉大な魔法遣いでも決して成し遂げる事は出来なかった事―


 ヤミを完全に"殺す"という事。



 それが一体二体ではなく、何十体ものヤミの死骸がそこには転がっていた。さも当然のように。
 


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