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廻る、廻る。


その世界は、泣いていた。その世界は、待ち焦がれていた。全てを終わらせるその日まで。









そして全てを包み込んだ。





世界と彼らと始まりと







辺りは、一面、砂嵐に見舞われていた。勿論、木や他の生き物など見当たらない。そう、他の生き物は、だ。


「見えない…。」


不意に、声が降ってきた。まだ幼い。だが、凛とした響きを持っている。

「だから、止むまで待ってれば良かったんだ!」


今度は、まったく別の、ハスキーな声。そして、明らかに、人間の出す声ではない。徐々に近づく、二つの声の主は、何やら言い争っているように聞こえる。ざ、と砂嵐を割って出てきたのは、柔らかそうな、首のなかほどまでのチョコレートブラウンの髪を風に靡かせ、右目には黒っぽい眼帯をつけた、何とも可憐な少女。最初の声は、此方のようだ。そして肩には、艶地色の羽の鸚哥がいた。普通であれば、鸚哥は喋らない。が、


「うわっ!?目ぇ、砂入った!」


聞こえたのは、先程のハスキーな声。矢張り喋っていたのは、この鸚哥のようだ。


「どこだろ、此処…?」


「あー、紅葉の所為だ!」

紅葉と呼ばれた少女は、鸚哥が騒ごうともなんのその。吹き荒れる砂嵐の中、しきりに辺りをきょろり、見渡している。それでも尚、騒ぎ続ける鸚哥を、紅葉はジト目で見た。


「…最初に"動かないことには始まらない"って言ったの、ミカンじゃん。」

むぅ、と不満げに睨む彼女にう、と言葉に詰まる鸚哥。ミカンと云うらしい。暫くお互いを睨み合っていたが、


「「…腹減った。」」


正直な体に、は、と溜め息を吐いた。







■□■□








「…ん?」


森のなかを歩いていた足が止まる。高い背丈の持ち主だ。透き通る空の色を持つ猫毛が、襟足程で跳ねている。くる、と黄緑色の瞳が、上を向いた。


「なんだ。鳥かよ。」


左目の下には傷を塞ぐ、明らかに自然のものではない何かが貼られている。はっきりとした顔立ちに、その瞳は、まだ幼さも窺えた。


「…うーん。」


彼もまた、行く宛は無いようで、物珍しそうに彼方此方をきょと、きょと、と視線が泳いでいた。不意に、右手の人差し指を立てると、突然、


ヴン、


目の前の空間に、片手で包めるほどの、何か細長いモノが、姿を現した。それは、みるみるうちに長くなり、遂には青年の腰までの高さのステッキへと形を変えた。青年はそれを、トン、と地面に立てると、






手を離した。



所謂、棒倒し。



ステッキは、ゆっくりと青年の右斜め前へと傾ぎ、ぱた、と草の上に倒れた。


「ん!こっちだな…。」



すぃ、とステッキを拾い上げ、ぱちん、一つ指を鳴らす。すると、また、ステッキはあっという間に縮んでいき、消えた。

さく、さく、再び歩き出した彼の翻ったコートに刻まれていたのは、



:リオン・ディフィーラ:



明るい色が、空へと溶けた。

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