月明りに照らし出された真宵の横顔は、春美が今日まで見た中で一番美しかった。
「ハミちゃんは流れ星って信じる?」
「流れ星、ですか?」
「流れ星にお願いすると何でも願いが叶うって言われてるんだよ」
吐く息は朧に白く、指先がかじかむ程寒い夜である。空に向かって両手を広げてみせる真宵を真似て、春美が空を見上げれば先日授業で習ったばかりのオリオン座がそこにはあった。流れ星の俗信を春美は知らなかったが、今にも零れ落ちてきそうな満天の星空に包まれながら、なるほど御利益がありそうな輝かしさだと溜め息を吐く。
「何でもお願いが?」
「そう、何でもだよ、凄いでしょ」
「…信じたい、ですね」
うん、と遅れてから返事をした真宵は瞬きを必死に堪え、長い睫毛を凛と空へ向けている。その黒い瞳が映したがるのはただ一つ、願い事などはとうに決まっているというのに。
「真宵さまは、何を願うのですか」
もうすぐ、オリオンの三ツ星を引き裂く朝がやって来る。きっとハミちゃんと同じだよと笑った真宵はやはり美しいから哀しくなる。