優れているだとか劣っているだとか。善だとか悪だとか。正解とか、間違いとか。人間はそうなのだ。何かと己を比べたがる。そうして優越感だとか劣等感だとか、得なくても良いものを得ては一喜一憂し、笑ったり泣いたり、そうしていないと生きてはいけない。人間はそうなのだ。そういう風に、気紛れな神様が創ったのだから。
(似ている、なんて)
残酷だった。茜には何より心に痛い。似ているの、ならば。ならば。彼女にあって茜に足りないものは何なのだろうかと。劣等感が生まれる。蝕まれる。沈んで、いく。彼の隣に居ることが呼吸をするより当たり前な彼女が、自分に、似ている。そんなはずはない。だって茜には、彼の手を握ることなど、叶わない。彼の手は茜に触れない。最初からそうだ。決まっていた。だってそうなのだ、気紛れな神様がそう決めたのだから。似ているのに。別の人間。彼女と茜。違うのだ。同じにはなれない。
(…似ている、なんて)
鏡の中で己が泣いている。鏡に写る涙を指で拭ってやる。彼女の涙はこうして、彼が拭ってやるのだろうか。だとしたらその指はきっと西日よりも温かい。掬われる涙はきっと海よりも美しい。茜が知ることは叶わないけれど。似ている、なんて、笑ってしまう。
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