またなの、とイーピンが溜め息を吐く。うん、と弱々しく頷くランボの頭を撫でてやる気は到底起こらなかった。しかしはらはらと流れる涙だけはどうにも見過ごすことが出来ず、イーピンはポケットから取り出したハンカチで乱暴に顔を拭ってやる。仕上げに、赤くなった鼻をハンカチ越しに摘んでやれば至極自然にランボは鼻をかんだ。お気に入りだったのに、とイーピンがごちればランボは素直にごめんと頭を下げる。このハンカチが五年前の誕生日に己がイーピンに贈ったものだと、ランボは気付いているのだろうか。
「別れたくないならもっと女の子に優しくしないと駄目じゃない」
「してるよ!だけどみんな口を揃えて言うんだ、あたしとその女どっちが大事なのって」
「それで?」
「もちろんイーピンって答える、だってそれは嘘じゃない」
そう言ったランボの目に迷いがないから、イーピンは溜め息を吐くより他にない。実に厄介だ。救いようがない。これではランボに関わる女たちが不憫で仕様がないとイーピンは思う、しかしそこには当然イーピンも含まれているのだからままならない。ずっと最初から、そして、これから最後まで。イーピンはここから抜け出せない。
「だけどランボは私と恋人になるつもりはないんでしょう」
「やだよ恋人なんかにしたくない、そんな哀しいこと言わないでよイーピン」
泣きながら縋りつくランボのシルバーブレスレットがイーピンの背骨に当たっている。二年前の誕生日、イーピンがランボに贈ったシルバーブレスレット。あと少し背伸びをすれば、犬のように鼻をすり寄せるランボの唇が届くのに。イーピンの踵はしっかりと地面を踏みしめている。ずっと最初から、そして、これから最後まで。
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