油断してしまった。最近夜通し気を張っていたせいだろうか、殺気を感じなくなった時にふっと肩の力を抜いた。そしたらこのザマだ。慣れてしまった感覚のおかげで少し避けることができたものの、連射された銃弾を全て避けることは元々平凡な生活をしていたわたしには無理だから。反撃しようとも思えなくて、血塗れになった左腕や右足をかばいながら、近くにあった廃屋まで逃げ込む。簡易ベッドや不清潔なトイレを見る限り牢屋だったのだろうか。だけどどっちも触れる気にならなくて、壁に寄りかかった。

「死ぬんだろうなあ」

 絶望が自殺してから、暴動は少し激しくなった。77期生の位置も把握していたのに、その後別の場所に移動してしまったみたいで、分からなくなった。学園から出てきた彼らの役に立てると思ったのに、顔を合わせることもなく死んでしまうのがなんとも歯痒い。体もだんだんと動かすことが億劫になってきた。所詮何の役にも立てないのが、一般人の定めなのかな。

「おや、死にそうなんですね?」


「あ、日向くん」
「今の僕はカムクラですけど」
「あはは...そうだったね」

 力なく笑う。少し前ならごめんごめん、と言いつつも話を続けるだろう。だけどそんな気力も体力も今は無くて、命はか細い悲鳴を上げていた。

「完璧人間の君はさ、この状態何とかできない?」
「そんなチートじみたことはできません。三次元ですから」
「そっか...」

 口を動かすのも辛くなってきた。口内はパサパサするし、体も冷えてきて、限界がすぐそこまで迫っているのを感じる。応急処置が出来たらこの状況はちょっと変わっていたかもしれないけど、何度も言うがわたしはただの一般人だから。それこそ超高校級の保健委員とやらがいてくれればよかったのだけれど、絶望堕ちしている今となっては頼ることすらできない。

「...なんでずっとここにいるの?いつもならすぐ帰るのに」
「さあ?何故でしょうね」
「はぐらかさないでよ...」

「......日向創に会いたいですか?」

「、えっ」

 反射的に彼の方へ顔を向けると、視界が閉ざされた。唇に暖かいものが触れて、この感触が分からないほど鈍感でもない。ながいながいキスに窒息死させられるのも、愛していたひとにされるなら悪くないな、と思った。


それでもいてくれるのね

(名前あなたは、撃ったのも僕で)
(この状況も予想通りと言ったら、どんな顔をするんでしょうね)

(...まあ、そんなこと僕には分かるんですけど。......ツマラナイ)

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夢主と日向くんは幼馴染みで、日向くんしか見ない夢主を絶望させたかった、自分を見てほしいと思ったカムクラさん。無意識だと尚良し


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