依頼を一通り終わらせて、リフレへ足を運ぶ。何となく、マスターの作るカフェオレが飲みたくなったのだ。常連になると、好みに合わせて味を調節してくれるマスターはとても優しいと思う。何度も作ってもらった記憶があるので、多分わたしは常連だろう。

「マスター!こんにちは」
「ナマエちゃんじゃないか!お疲れ様、またみんなの頼み事を聞いたのかい?」
「ええ、まあ。頼られるのは嬉しいんで」
「そっかそっか」

 マスターは、わたしが死者との記憶を忘れない人だと知っている。みんなを忘れたくないと言う彼に、こんな人がいてね、どんなだったよとか話すことが度々あって。・・・その話をして泣き出したであろうわたしを慰めてくれるのもマスターだ。なんだかんだで1番身近な人かもしれない。親みたいな。

 お待たせ、と言って差し出されたのはカフェオレとミニドーナツ。・・・あれ?

「わたしドーナツ頼みましたっけ?」
「それは私が頼んだのよ!」
「カルラ、」

 一体いつの間に。わたしの隣に腰掛けた彼女を見て、ああ払わされるなあと思った。「マスター紅茶追加ね!」・・・追加・・・だと!?

「優等生さん、上の人に言いつけちゃいますよ?」
「ナマエ、アンタどうせ忘れちゃうじゃーん」
「メモ取っとくから大丈夫」
「なっ!?なんでよーいつもは見逃すのに!!」

 わたしいつも見逃してるのか・・・優しいなあ、どこか他人事のように思う。今週はお金がピンチなんだと伝えると、渋々といった感じで引き下がってくれた。お金を払うカルラなんて滅多に見かけないので、わたしとしては大収穫だ。

「今回だけよ!次待ってるんだからー!」
「はいはい」

 カフェオレを飲み干して席を立ったわたしに、カルラが言う。優しい一面も見れて満足だから、別にいいかなって思った。

 ちょっと甘やかしすぎかなあ。今のわたしも前のわたしも大概である。



「・・・あ、ナマエにナギとの進展具合聞き出すの忘れてたわ」

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