「ツール」
「え?今日はツールの材料集めるの?」
「そうだ。課題の材料は殆ど手中に収めた」
「ふーん...で今日のわたしのペア「田中だ」2連ちゃんかよおおお!」
まあ嫌とかそういう類いではないから田中くんを引き連れて向かった。
どこに?砂浜に。
「暑い...日光の照り返しっていうの?焼ける...」
「フッ、これだから俗世の者は...地獄の業火に比べれば冷たすぎるわっ!!」
「えっでも田中くん...」
「......なんだ?」
「...いや、何でもない(汗かいてるね!なんて、言えないよ...!!)」
仮に言ったとしよう。...暑い以外にこの場所で汗をかく理由があると思えない。そして、もし彼が冷や汗だと返したと考える。わたしが冷や汗?何でかいてるの?そんな言葉を返してしまったら...!!田中くんが無言になって返答に困りストールで顔を隠しながら必死に理由を考える姿が目に浮かんだのは...わたしだけかな...
「ふへー死にそう.........ん?」
「どうした」
「いや、その、あのヤシの木...モノクマの顔が...」
「ボクの顔がどうかした?」
「ですよねー出てくると思いましたとも!」
「ッ貴様、いつの間に俺様の背後を...!?」
田中くんファイティングポーズなんかしないで...!これと戦う気かい...?!
後ろから聞こえた声に振り返れば...まさに、今話題にしようとした顔をもったアイツが、現れた。砂の上を歩く独特の音なんてモノクマからは皆無で。
「いやー青春だねー!2人ともそんなに近付いちゃってさ!」
「!!?」
「え?別に何も...って田中くん!?まるで茹でダコ...!」
確かに田中くんの肩とわたしの顔が触れそうになるくらい近かったけど...、一瞬の間に何があったというんだい田中くん...!ストールで真っ赤な顔を隠、す...どうしたんだ目が合ったと思えば田中くんの目が泳ぎ始めた!?
「あっそうそう!そこのボクの顔はガチャになってるから、自由に遊んでいいよ!」
「えっちょっと、......消えた...」
なんか最初も途中で消えたような気がするんだけど...まあいいか、とりあえず田中くんだ。大丈夫なのかな...この暑さも相まって倒れるんじゃないんだろうか...
「...とりあえず木陰に行こうか?」
「...」
おお...無言で言うこと聞いてくれた...?.........可愛いところいっぱいあるね田中くん!
「涼みながらガチャでもしよっかなー...とか思ったけど、え?何これ課金制?」
「...コイツを使え」
「うおお...なにこの趣味悪いコイン」
「破壊神暗黒四天王がその1枚だけ所持していた...くくく、感謝するんだな」
「(あ元に戻った)...早速使わせてもらうね田中くん」
「(惜しむ様子もなく使用する...だと...)」
なんだか複雑な表情になっている田中くんを視界の隅に追いやり、モノクマにモノクマのコインを投入した。そしてゆっくりと、回す。最初で最後の1枚だからいいものが出たらいいな、なんて、欲張りすぎかな。
回し終えたらしく、もう回すことの出来なくなったモノクマから、赤いカプセルが出てくる。
「うーん?...!!これ...可愛い...!」
「...イン・ビトロ・ローズか」
「はい田中くん!これあげるよ」
「ッ!?」
「だって田中くんのコインだったし...」
「...貴様、これが指し示す意味を知らないのか?」
「別にいいじゃんそんなこと!」
綺麗だから。そんな理由では駄目だろうか
(イン・ビトロ・ローズ)
(赤い薔薇の意味は"愛情")