「現実世界のある日」


「...苗木君」
「...おい苗木」
「まこちん?」
「なーえーぎー」
「...苗木っち?」


「うーん、もう食べられないよ...」


「巫山戯るのも大概にしろ」
「うー...ん...?って痛い痛い痛い!!ちょっ、十神クン髪の毛引っ張るのやめてよ!」
「フン、お前が起きないからだろう?」

 夢の中から現実へ引き戻される。...別に髪の毛の飛び出てる部分を引っ張らなくてもいいじゃないか...!まだジンジンと痛むそこを手で押さえる。そんなボクに呆れと軽蔑の眼差しを向けたあと、十神クンは足早に去って行った。...えっ軽蔑されたの?

「...もう集まる時間なのに苗木君が来ないから」
「そうだよー!心配して見に来てみれば、寝てるんだもん!しかも寝言!」
「...まあ十神っちがああなるのも仕方ないべ!どんまい苗木っち!」
「ゲラゲラゲラゲラ!まこちんの涙目も美味しいけど!熱い軽蔑の眼差しをあたしにも向けて白夜様ァッ!!」

「...あはは」

 何と言うか...いつも通りで。いつの間にか目に浮かんでいたらしい涙を拭う。ジェノサイダーはさっきの言葉を叫んだ後、十神クンを追いかけてボクの部屋から出ていった。...ドアは閉めてほしいんだけどなぁ...

「...平和よね、ここは」
「...そうだね」
「えっと...確か、ちんせいか?してきたんだったっけ?」
「おまけに今ここは無人だべ!平和じゃなかったらそれこそ変だって」
「あっそうだよね!」

 朝日奈サンと葉隠クンが晴れやかな顔で笑う。それをボクは目を細めて見つめていると、霧切サンに声をかけられた。

「...苗木君、あなた変なこと考えてない?」
「えっそそそんなことは」
「あるんでしょ?」
「...はぁ」
「ちょっと、溜め息なんてつかないでちょうだい」

 ...鋭いなあ、いっつも。誤魔化した、なんて日には静かな怒りを向けられることも分かりきっていて。...実際そんなことがあったし。

「...ただ、」
「...」
「もし、ボクらのコロシアイもデータの中だったら...みんな助かったかもしれないなぁー...なんてって痛い痛い!!何で十神クンも霧切サンも髪の毛を引っ張るのさ!」

「みんなの死を背負って生きていくんじゃあなかったの?」

 その言葉に、何も返せなかった。ボクはその決心を覚えてた。だけど、

「そう思わずにはいられないたたた!もうやめてよ抜けるから!」

「あの悲劇を二度と起こさないために私達はいるの。...違う?」
「...そうだよ苗木。アタシだって何回もさくらちゃんのこと考えたんだよ?」
「オ、オレだって色々考えたんだべ!」

「それに、みんなはいつもいるじゃない...心の中に」

「...霧切サンの口からそんな言葉が出るだなんてっ痛いよ!さらに強い力で引っ張らないで!」
「ほら、行くわよ苗木君。あの2人も待ってるわ」

お仕事を始めましょう

(「頑張って」と)
(誰かに言われた気がした)





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