「2日目、朝の会」


「異論があるとは言わせないからな」

「採集する時のパートナーくらいどーでもいいって。おれは飯が食えればいいし」
「終里オメー馬鹿か全然よくねーよ!!今後のオレの運命を大きく左右するんだよ!」
「左右田だけにー、なんて寒い台詞はやめてよねー鳥肌が立っちゃうじゃーん!」
「んなこと言ってねーだろーがよォ西園寺ィ!」

「おはよーございまーす!苗字遅れましたすみません!」

 レストランに繋がる階段を1段飛ばしで駆け上がって、第一声を張り上げる。遅れて来たわたしに、みんながおはようと返事を返してくれることが、ものすごく嬉しくて。やっぱりいいよね、人が居るのは。頬が緩んでいくのが自分でも分かった。

「あ!そういえば苗字さんはさっき狛枝くんに見られたんだってね!」
「は、花村クン!?」
「あとで君にも聞くから待っててね狛枝くん!」
「え」
「で、苗字さんどうだった?変な気分になった!?」
「うわー鼻息荒くて気持ち悪ーい!」
「ちょっと、花村!あんた何聞いてんのよ!」
「んー?いやあ特には...申し訳ない気持ちにはなったけどね」
「名前ちゃんも真面目に答えないでよ!」

 そっか、と残念そうに花村くんが呟く。なんでしょんぼりするんだ...?だけど今度は目を輝かせて狛枝くんの方へ向いた。どうやら彼のターゲットは狛枝くんに変わったようです。冷や汗を流しながら後ずさりしている狛枝くんに心の中で合掌した。ご愁傷さま狛枝くん。

「...ん?十神くん、テーブルに座って何してるの?」

「ふん、見て分からないか?」

 ただの紙に、わざわざ30cm定規を使って線を引いている十神くんは新鮮だと思う。こういう仕事は他人に任せそうだけどなぁ。意外。...待てよ、もしかしてこれって...

「あみだくじ...?」

「そうだ。さっき十神が決めたことでな」
「ペコちゃんの言うとおりっす!うひゃー、パートナーはくじ運に頼るしかないなんて白夜ちゃんの鬼畜ゥ!」

 なんだかテンションが高いよ澪田ちゃん。言葉とは裏腹に、あみだくじ楽しみなのでは...?よく見ると鼻息が荒い。どうやらビンゴだったようです。

「この方が確実だし効率もいいだろう?ちなみに選ぶのは女子だ」
「た、確かに...そういえば掃除係はどうするの?」
「選択肢のうち3つが掃除に繋がっている。他は全てペアになる男子の名前だ」

 な、なるほど...手際いいな十神くん...!はからずも女子3人が掃除係になるんですね!頭いいなぁ...こういう適度などきどき感は必要だし。毎日同じ人と採集するよりかは大分新鮮な気分が味わえると思う。...まあ例外もいるけど。

「オレは毎日ソニアさんと一緒に「異論は聞かんと言った」...!」
「うわーキモ...あんた女?すごく女々しいんですけど!」
「う、うっせうっせ!」

 御曹司スキル半端ねぇ。そして左右田くん惨め...!もう、あれだ、ソニアちゃんの左右田くんに対する視線が冷たい。もう駄目だね左右田くん。完全にソニアちゃんの信頼やその他諸々を失ってしまったようです。...うん、めげるな左右田くん、頑張れ左右田くん。

「さあ女子、好きな道を選べ」

******

「ふっ...まさか貴様のような奇人と手を組むことになろうとはな...」

「こっちの台詞だよ田中くん...!色々と語句の訂正はするけどね」

 博愛主義者のわたしと、自称世界の全てを支配する田中くん。...相性悪いんじゃね?最っ高に最っ悪なんじゃね?そんな田中くんと共に牧場へ向かっております。ちなみにそれぞれの目的地は十神くんの独断だそうで、チームの力量で決まると言っていた。...まあ田中くんが居たら山とか自然系の場所行きは確実ですよね!

「氷の覇者である俺様の実力、とくと見せてやろうではないかッ!」

 牧場に着いた途端に発せられたのは、自信に満ち溢れた声で。

高笑いが木霊した午前10時

(田中くん、動物怯えてない...?)
(なっ、馬鹿な...!この俺様とあろう者が、とんだ失態を...!)
((大丈夫かな田中くん...))





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