「双方にとってバッドエンドである」


「...いつの間に寝たんだわたしよ......!」

 眩しい、と思ったらベッドに横たわっていた。朝...だと...?とうとう記憶がぶっ飛ぶ年齢に達してしまったのだろうか...日向くんと別れたあとぐらいからの記憶が消失している。あれれ、確か夕方でしたよね。いつ寝たんだ。馬鹿か?馬鹿なのか!?世界中回ってたくらいだから、そこまで頭は悪くなかったはず、だけど。ていうかそんな話じゃない。

「問題なのは、記憶がぶっ飛んでいる時間帯にわたしが " 何をしたのか " ...」

 博愛主義者も困ったものである。記憶がない間、誰かに何かしたかもしれないのだから。過剰なスキンシップを取っていたかもしれないし、迷惑行為をはたらいていたかもしれない。

「...どうだったにせよ、まずレストランに行かないとねー」

 よっこいせーと言いながらベッドから這い出る。どこのばばあだ。それよりも起きてみて分かったけど、どうやら服を着替えずに寝たようで、目も当てられないくらいくっしゃくしゃになっていた。

 なぜかコテージのクローゼットに自分の替えの制服があったので、とりあえずその内の1着を手に取る。上の制服を脱ぎ終わると、タイミングがとても悪いチャイムが鳴った。......誰か来た、だと。待て待て待て、今わたしブラジャーと下の制服しか身に付けてないんですけど!?開けられたら困るなーと思ったけど、そういえばウサミ先生が「勝手に開けることはできまちぇんよ!」とか言っていた気がする。安心してゆっくり着替えよう、そう思ったんだ。

 新しい上の制服を取ると、がちゃりと鍵の開く音がした。

「苗字サンごめんね、入らせてもら.........あれ?」
「.........え?」

 開いたドアから入ってきたのは狛枝くんで、普通ならありえないであろう展開に目を白黒させている。「あっ、えーっと...その...、......」と狛枝くんがか細い声で呟いたと思ったら、今度は顔を真っ赤にした。...案外純粋な子なのかもしれない。

「ごめんね狛枝くん、こっっっんな貧相な体を見せちゃって...!!!」
「えっ!?それは違うよ!謝るのはボクの方だ...!」
「いやわたしが」
「違うよボクが」

「もういいから狛枝はさっさとコテージから出ろ!」

「「あっ日向くん」」
「ハモるな!」

 さすが日向くん。状況の飲み込みが早い、早すぎるよ!そして1度もわたしの方を向かない日向くんはただの紳士か何かですか?いや、まあちらっとは見たかもしれないけど...

「狛枝くん、見苦しい姿見せてごめんね...!日向くんも!」
「えっ」
「は...?」
「ええ?」

「お、俺はそんなことないと思うぞ...?」

「......うん?」
「とっとにかく!いきなり介入してごめんな。苗字も早く着替えてレストランに来いよ?」
「いえっさー!」
「行くぞ、狛枝」

 そう言うと、日向くんは足早に去っていった。反応が遅れた狛枝くんが慌ててついていこうとしていたけど、突然立ち止まったと思ったら眉根を下げた顔でわたしの方を見る。...はっ、わたしもしかして何かやらかして?

「こっ狛枝くん、どうしたの」
「いや、その...」
「わたしなにかやらかしましたか...!?」

「違うよ!...ただ、苗字サンはもう少し自信持っていいと思うんだ」

「...おおう」
「あっ、ごめんね!こんなゴミが苗字サンに意見を言うなんてボクはどうかしてるよ...!」
「えっ、そうじゃな、」
「それじゃあ、またあとで」

 狛枝くんは逃げるように走っていった。自虐したり卑下したりするのが癖なのか...新しい発見をしたなあ。......それよりも、

「わたしが自信持ってないって、見抜いたのかい狛枝くん...」

 洞察力やばいな。半端ねえな。...わたしは、みんなを愛することで自分を守っているといっても過言ではない。ていうか、実際にそんな感じで。自分が愛していたら、嫌われない、はずだし。好きでいることは素晴らしいことだと思う。

「わたしは...嫌いって言うよりも、好きって言えることが大切だって知ってるから」

 結論、狛枝くんはわたしの中で要注意人物になりました。

本能が発する危険信号

(博愛主義者っていう肩書きには、何かあるのかな?)
(超高校級であるみんなのことを、苗字サンのことを)
(もっともっともっともっと知りたいなぁ...!)





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