「自由時間といっても」


「何をどうしろというのさ...」

 何をすればいいのか分からないんじゃない。選択肢が多すぎて困るんだ。誰から愛せばいいのか分からないよ!まあ悩んでても仕方ないからね!まずは行動あるのみ。ていうか、みんなってキャラ濃いよね。

 ウサミ先生にもらった超極薄の生徒手帳を起動させてみる。最近の技術は進歩してるなーなんて考えながら、生徒手帳の『ツウシンボ』の部分を押すとみんなのプロフィールはところどころ希望のカケラで埋まっていた。

「...あれ、なんでもう希望のカケラが少し集まってるんだろう...?」

 みんなとわたしで集めたのだろうと思われる希望のカケラは、数に差はあるものの、確かに表示されていた。今回初対面で、しかもまだ1回しか話したことのない子だっているのに、少なくて2・3個、多くて6個全て集まっている子もいて。

「...まあ、気にしても今のままじゃ情報が少なすぎるし...いっか」

 この50日間で集め終わらない数だと思ってたから、ある意味ラッキーだったと捉えた方がいい。とにかく、いっぱい話してたくさん愛さなきゃだめだから悩んでる時間なんてないし、早く行かないと。


「苗字」


「あれ、日向くん!さっきは疲れたねー!」
「そうだな...」

 後ろから声をかけてくれたのは日向くんで。やっぱり初日でさっきの労働は堪えたのか、アンテナが少ししょげていた。......わかりやすい反応だなぁ。これから日向くんの体調や機嫌はアンテナを見て把握することにしよう。アンテナ観察日記なんて題名で自由研究でもやろうかな。

「でも、あんなに楽しかったのは苗字のおかげだから、お礼がしたくてさ」
「えっ、そそそんな、お礼なんていいよ!その気持ちだけで充分だよ!」
「遠慮しないでくれ!俺がしたいだけなんだから」
「いやっだから、」

「...いやか?」

「(うっ)」

 なんてこったい。アンテナがさらにしょげてしまった。博愛主義者として、相手を悲しませるだなんてもってのほか...!ここは、覚悟を決めるしかないか...頑張れ自分...!

「...喜んでお礼していただきます......!!」
「じゃあ、これ受け取ってくれ」
「...?」

 日向くんが差し出してきたのは、可愛らしい白とピンクのチェックがデザインされている小袋で包まれた何か。...心なしか、なんだか甘い香りがする。え、なにこれ。蝶結びのリボンを今すぐ外して中身を見たい衝動に駆られた。

「日向くん、これなに...?」
「さっき、山に素材を採集しに行ったよな?」
「うん」

「美味しそうな実だとかがいっぱいあったからさ、持ち帰って作ってたんだよ、カップケーキ」

 ま さ か の カ ッ プ ケ ー キ 。作るものが可愛いよ日向くん!男子とは思えないよ!家庭科スキル、下手したら自分より持ってるんですけど。一人の女子として、博愛主義者として負けていられない。

「苗字に何あげたら喜んでくれるか考えたけど、よく分かんなかったんだ」
「わたし、結構何でも喜ぶよ?」
「そうだったのか...じゃあ次は変なものでも持って来るよ」
「変なもの限定なの!?」

 ピロロン、とカケラが増えた音が聞こえた。

案外、大丈夫なもんじゃないか

(日向くん!せっかくだから一緒に食べようよ!)
(そうだな)


((実は、なにかしてもらう側になるのは、苦手なんです))





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