「苦は楽の種」


「初日で山担当とか...マジか...」

 この炎天下の中、わたしは山に派遣された。海よりも疲労するであろう山に。なぜだ。派遣するなら弐大くんに頼めばいいのに...!そしてそんな彼はなぜかロケットパンチマーケットに派遣されている。どういうことだ...

「...それは俺も思うよ苗字」
「ありゃ日向くん、わたしまた声に出てた?」
「ああ、丸聞こえだったぞ」
「おおうふ...」

 とりあえず、山で素材を採るからには登らなければいけないわけで。

「うえええなにこの坂!急斜面すぎるって...!」
「...引き返すか」
「うん...」

 途中ほぼ直角の坂という高すぎるハードルが立ちはだかった。無理ゲーすぎるだろこれは...でも山も愛してるよ!山菜美味しいよね!

「...ん?」
「...?どうしたんだ苗字?」

「いやぁ...なんか呼ばれた気がして...」

「......は?」
「こっち、行ってみようよ日向くん!」
「え、ちょ、怪しすぎないか!?」

「大丈夫だって、信じて日向くん!」

 尻込みしている日向くんの左手を掴んで無理矢理引っ張っていく。こういう事態は山以外にも幾度となくあったけど、自分の身が危険に晒されたり痛い目に遇うこともなかった。むしろ今まで自分に対して良いことが起こっている。わたしの愛に応えてくれてるのかな、なんて思ってみたり。

「...この穴からかな?」
「穴...?全然気付かなかったな...」
「うー、結構小さいね...日向くん通れる?」
「ああ...なんとか」

 見るからに樹齢をたくさん重ねているであろう大木の根元辺りには、ちょうど人が1人通れるであろう小さな穴が開いていた。

「うわああ...!!素材がたくさん...!」

「すごいな...!」

 くぐった先は、『神秘』の一言に尽きる。綺麗な湖に、鉱石がたくさん埋まっている岩石、それに燃えるように咲く赤い花。...え、ここファンタジーみたいな世界じゃないよね?ジャバウォック島だよね?

「...これは、かなり採集できそうだな」

「......確かに、そうだね日向くん!」
「今まで何も採集してないからな...さすがに収穫無しはキツいだろ」
「弐大くんや赤音ちゃんあたりにボコられるのは勘弁だもんね...!」

「苗字、また来ような」

「もちろん、よろこんで!つまりわたしたちの秘密ってことだよね日向くん!」
「え?まあ...そうだけど」

2人だけの秘密だったりする

(ただいまでーす!)
(名前ちゃん、創ちゃんおかえりっす!)
(無ッ、なんじゃあこの弩えれぇ素材の数は!?)
(熱心に取り組んでくれて先生は嬉しいでちゅ!)
(えへへへへ!やったね日向くん!)
(ああ...苗字が嬉しそうで何よりだよ)





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