「なんだよ」

 その問いかけに答えはないまま、イズルはキッチンに向かって行く。少し驚いたのは自然と低い声が出たことだ。別に怒ってないのだけれど、何故か出た。そのことを不思議に思いつつ、もう一度小さな声でなんだよと呟いた。
 不意に、声が返される。

「...名前さんがココアを飲んでいる時の幸せそうな顔を見たかったんですか?」
「......っはあ!?」

 いきなりなんだよ!?突拍子もない質問に驚きを隠せない。「その顔が好きだと前言ってたじゃないですか」いや、まあその通りなんだけど...それに、見たくないって言ったら嘘になるけどな。

「...それがどうかしたのか?」
「さっきの問いかけの声音が怒りを含んでいたのはそのせいだと思います」
「俺は、無意識に怒りを抱いていたってことか...?」
「そうですね」

 そう思います、と続けられる。キッチンに到着すると薄暗い明かりが俺達を照らした。

「丁度4分ですね」
「お前もう食べるのかよ...って夕飯は?!」
「勿論食べますよ?僕は育ち盛りですから」
「そうか......」

 パキリと綺麗に割れる音がした。案の定イズルが割り箸を割った音で、ちらりと目をやるとカップ麺の蓋を開けていた。食欲をそそる匂いが辺りに充満する。...俺も夕飯カップ麺にしようか...いや、でも健康に悪い。だけど...

「ところでハジメ」
「ん?」
「名前さんとはしたんですか」
「...っ!?ちょ、え、はっ!!?」
「そうだろうと思いました...ツマラナイ」
「な、なんだよ突然!!!」

 まだ名前で呼んでもらってないですもんね、薄々感じていました。そう言いながら麺をすする姿に少しイラついた。

「それで、このチケットは?」
「あ...ああ、お礼にっておばあさんからもらった」
「明日学校サボってください」
「嫌に決まってるだろ!?」
「優等生の僕にかかれば教師の説得なんて容易いことです」
「うっ、なんて説得力のある言葉だ...斬れない」

 ピラピラと目の前で振られるそれを渋々受け取り、名前のいる部屋に向かった。


******

「...」

 ハジメが去っていった方を見詰めながら、麺の量を着々と減らしていきます。あと少しすれば冷めてしまうスープを残っている麺とともにかきこんで、おやつを終わらせました。ごちそうさま。

「あまりに遅いと、僕が奪ってしまいますよ?」

動き出した感情

(名前!)
(うわあっ!?な、なに日向くん)
(明日映画見に行くぞ)
(......本気?)
(テストなんてない。明日は休みだ)
(え、ええええ!!?)




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