かち合い


注意

こちらは本編鯱鮫の番外編です。
そして、リクエスト内容を元にした鯱の容姿を描写する表現が含まれています。イメージを壊したくない人は読まないことをお薦めします。














スクアーロは夢を見ていた。

剣士に挑みにいくのを明日に控えた夜だった。
辺りは一面真っ白だ。気がおかしくなりそうなほどに。音も一切ないものだから、耳に違和感を感じる。終いには目がチカチカしてきて、気休めにグッと目を瞑った。


「!」


もう一度目を開けると、真っ白では無くなっていた。黒い髪、黄色っぽい肌、紺の服。一瞬のうちに、音も風も無く一人の女が立っていた。女も暫くは目を丸くしていたが、急にふ、と笑みを漏らした。


「こんにちは」
「……あ゙あ」


…なんだこれ。
怪訝な顔をしていたんだろう、女は少し困った笑みを浮かべた。どうしていいかわからないようだった。自分もどうすればいいかわからない。暫く微妙な空気が流れたあと、女はストンと腰を降ろした。なんだなんだと思っていると、ちょいちょいと手招きをしてくる。警戒しつつ近づくと自分の前を人差し指で軽く叩いた。座れということなんだろう。
何故だか素直にいうことを聞いた。嫌な気はいない。


「お名前は?」
「スペルビ=スクアーロだ」
「…そ、か」
「お前は?」


普段なら気にも掛けないことを無意識に返した。女は戸惑ったそぶりを見せてから、また笑った。


「○○○●●●」


涼しさを帯びる目を細めて女は呟いた。

ぽつりぽつりと会話をしていく内に●●●が剣術が好きだということがわかった。スクアーロはそれに随分気をよくした。警戒心も解け、好感さえ持ち始めている。口数が増え、二人とも興奮して話していると、たまに●●●は控えめに笑う。
スクアーロは改めて●●●を見た。
高い位置で纏められた長い髪は●●●が笑うたび、さらりと揺れる。少し切れた涼しげなめが印象的だと思った。女の云々はわからないが、顔は整っている方だと思う。聞き慣れない名前からして日本人だろう。年上そうだが、年齢はわからない。民族衣装を来ているようだが、●●●によく似合っていると思った。


「スクアーロ?」


凛とした声で自分の名前を呼ぶ。その瞬間スクアーロは我に帰った。急に自分の考えていたことが恥ずかしくなってきて、初めて顔が熱くなるのを感じた。


「なんだぁ?」
「ふふ、ぼうっとしてたみたいだったから。眠い?」


さっきまでは全くそんなことも無かったのに、●●●に言われると、急に睡魔が襲ってきた。


「少し、なぁ゙…」
「全然少しには見えないんだけどな…少し喋り過ぎちゃったね。楽しかったよ、スクアーロ。もう寝ちゃいな、おやすみ」


●●●はそう言って自分の頭をゆっくり撫でて来た。ふわふわした撫で方が気持ちよかったからだろうか、他人の、しかも初対面の奴の前で寝るなんてありえないことなのだが、すうっと意識は遠退いていった。


パチリ。薄暗い天井が移った。体を起こして今日見た夢を思い出す。実に変な夢だった。でも良い夢だったとも思う。
身仕度を整えながら、やっぱりもう一度思い出す。あれは、最近手応えのない剣士や剣術の不満から見たものだろうか。

他人の物だった剣を手に取る。今日のは手応えがあるといいが。


「…●●●」


夢の中の女の名前を思い出した。


かち合い


(何故だか、また会える気がする。)







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