選択の余地ナシ

「うわあ、すご…凄いね、フタチマル」


思わず、ついこの前進化した相棒に話しかけた。返事は帰ってこない。どうしたのだろう、足元をみると、自分と同じように間抜け面をした相棒。お互い田舎出身だもんね。
俺達は今、娯楽の町ライモンに来ている。ヒウンも高いビルが建ち並んで凄かったけどライモンも負けてない。遊園地やミュージカルには人がわんさかいるし、電気が特徴の町なだけあって、昼間だというのに何処もかしこもキラキラしてる。バトルのときとは違った高揚感が体を駆け巡った。
ジムにミュージカル。どれも凄く楽しみだった。でも、もうひとつ、俺が待ち望んでいたことがある。


(トウコ、何処にいるかな…)


そう、トウコ。俺の双子の姉で、唯一俺が私であることを知る人物。待ちきれなくて町を飛び出していったから、先輩トレーナーでもある。いつも俺のことを気にかけてくれた。一番気のおけない、大好きな姉だ。
トウコはライモンにここ最近留まっているらしい。バトルサブウェイにどっぷり浸かってしまったんだとか。キャスター越しに熱く語る姉を見たのはつい最近のことだ。廃人ルートまっしぐらだが気にしない。それに、タマゴ厳選なんて酷いこと、トウコはしない。
待ち合わせだった遊園地に足を運んでみたが、トウコの姿は見当たらなかった。
変わりに、つい最近知り合った緑と目が合った。


(なんでいるの…!?)


他人の振りをする前に思いっきりダッシュしてきた。こうなればもう逃げられない。これで何度目だろう。


「●●●!」
「………N…」


一度バトルしてから何かと絡んでくるこの青年は今を悩むイケメンである。不思議な雰囲気を纏う目の前の緑に絡まれる理由が塵もわからない。Nは濁っているようにも、澄んでいるようにも見える目を細め綺麗に笑った。


「観覧車に乗らないかい?」
「え、」


選択の余地ナシ

何かと小難しいことを言われながら半ば無理矢理ことを運ばれるのはいつものことである。

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