ぬこのしあわせ

私は猫である。世間のあだ名は平成のワトソン。なんともセンスのなさが伺えるあだ名だ。私はこのあだ名を塵も気に入っていない。まあ、気に入る気に入らないは別にして、私が世間様にあだ名をつけられるほど有名な訳には我がご主人にある。
我がご主人はまだ若い。高校生なるものである。して、ご主人は探偵というものでもある。ご主人はその探偵で随分有名なのだ。ご主人に解けなかった事件などなく、事あるごとにの堅い背格好の人達に引っ張られている。その際、私も必ず引っ張られる。ご主人が自分の足で立つことが出来る前から一緒にいたからと言うこともあるが、どうもそれだけじゃないらしい。堅い背格好の人達に頼まれるのだ。私にはそれが何故かてんでわからないが、いつでもご主人の側にいられるなら引っ張られるのも悪くない。

今日は本当に珍しく、ご主人に予定はない。ご主人は書斎の一番陽当たりのよい窓辺の席に腰掛けて小説の新刊を読み更けている。私はその膝の上で丸くなってうとうとするのが何より好きだ。最近はこういう時間もめっきりと減ってしまったから尚更。ご主人は時折背中を撫でてくれる。つくづく私は幸福者だ。
ちょうどご主人が本を読み終えたとき、どうしたものかパタンという音と一緒に私の眠気も空気の中に吸い込まれてしまった。仕方なく机に乗って伸びをすると、ご主人が不思議そうに私の名前を読んだ。なあに、と言うつもりで一声鳴くと帰ってきたのは携帯電話の電子音。


「え、まさかわかったのか…?…はい、」
「なーう」
「…はい、わかりました。今から向かいます。…事件だ、行くぞ」
「にゃあ」



ぬこのしあわせ

(これはこれで、幸せ)

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