…は?

今日は三ヶ月ぶりの謝肉祭だ。
獲物が前回よりも一回り大きかったこともあって、国のみんなも一層楽しそうな気がする。美味しそうな料理や酒や花の香り、あちらこちらから絶えず聞こえてくる歌声や笑い声に●●●は気分が高揚しっぱなしだった。差し出された料理を笑顔で受け取り、様々な人と会話を交えながら歩く。すると、見知った人物が視界に入った。

「ピスティ!」
「あ、●●●!探してたんだよ。王のところに行こう、ほら!」
「え?ちょっと」


有無を言うこともなく人混みの中をぐいぐい引っ張られる。人が少ない、王宮近くの開けたところに何人かのよく知った顔触れが集まっていた。
そして何時ものように綺麗なお姉さんに囲まれているシンドバッド王は、こちらに気付くとパアッっと目を輝かせた。これは非常にまずい、酔った王ほど面倒なものはない。逃げるしかない。そう思った瞬間、声をかけられた。


「●●●!何処にいってたんだ。こっちに来い!」
「…王よ、口調が乱れてます」
「ジャーファルみたいなこと言うな…今日ぐらい気にするな!」
「私みたいってなんですか!」
「いくらなんでも乱れす…て、ちょっとおお!」


油断した。王の手は私の腰をしっかりと掴んでいる。当然もがいてもびくともしない。ちくしょう!


「はっはっは!●●●は相変わらず細いなあ!」
「セクハラですよ、王」
「ヤムの言う通りですああああ膝に乗っけないでくださいい!」
「●●●」


羞恥心でいっぱいで、どうにかして降りようと暴れていたら、急に真面目な声色で名前を呼ばれた。吃驚したのは私だけじゃないみたいで、ヤム達も目を丸くしてる。周りの綺麗なお姉さんも王の顔を見て離れたところへ行ってしまった。


「…はい、王よ」
「お前に一つ頼みがある」
「王のためなら、何なりと」
「ああ、ありがとう…」


固唾を飲んで言葉を待つ。こんなときに言うなんて、よっぽど急なことなのだろう。祭りのざわめきを遠くに感じたときシンドバッド王の口が開いた。


「お兄ちゃんと呼んでくれないか?」





…は?

(あはははは!)
(シン!貴方って人は…!)
(だって一度でいいから呼んで貰いたかったんだよ!●●●)
(嫌です。助けてヤム!)
(●●●…)

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