ついでってのもなんだけど

今日も今日とて、佳主馬は自室でパソコンと向き合っていた。だがいつもとは少し違う。OMCで挑戦者の相手をしているのではなく、一人とチャットをしているのだ。
冷房を効かせた涼しい部屋の外でセミがずっと鳴いている。ヘッドフォンをしているといっても煩いのは変わりない。横に置いてある麦茶を入れたグラスを手に取った。


「どう?OZは」
〈やー、カズマの言う通り。もっと早く入っておけばよかった。すごいねえ!〉
「今時OZに入ってないなんて信じられないよ。オレよりタイピング速いくせに。」
〈いやいや、格ゲーさえ出来れば良かったんだよ私は〉
「ふうん」


彼女とは俗に言う幼なじみってやつだ。幼稚園からずっと一緒。小学校は6年間クラスが同じだった。明るいが、クラスの中心に立つような性格ではない。控えめでどちらかと言うとサポートが得意だと思う。男子も含めて、身内以外では一番気が置けない人物だ。そしてオレの現在進行形の初恋の相手だったりする。もう随分と好意を抱いているが、告白はまだ出来てない。
最近知ったのは彼女がOZに入ってないってこと。パソコンが得意っていうのは知ってたからてっきり入ってるもんだと思ってた。誘ったらすんなり入ったんで、多分単に面倒だったんだろう。


〈確か、こっちにも格ゲーあるんだってね〉
「OMCでしょ。やるの?」
「勿論!世界レベルなら強い人もわんさかいるんでしょ?楽しみだなー〉
「…じゃあさ」
〈うん?〉
「オレと勝負してみない?」
〈カズマと?強いの?〉
「まあ、そこそこ」
〈ふうん…じゃあさ、賭けよう!〉
「何を?」
〈負けた方が勝った方の言うこと一つ聞くってのは?〉
「いいよ」
〈ようし!絶対勝ってやる!〉


チャットを閉じてOMCに繋げる。数秒後に一人の挑戦者。


〈え、あれ?〉
「何?」
〈カズマって…チャンピオン?〉
「言ってなかった?」
〈言ってないよ!なにがそこそこ!?〉
「いくよ」
〈え、まっ待って〉
「無理」





ついでってのもなんだけど

((告白してみようか))
(え、ちょ、速い!速いよカズマ!)
(…ついてきてるそっちも凄いよ)
(嫌みか!…あ、)

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