モクレン

「クロス元帥よりも掴み所がないひとなの。年下にはとてもやさしいのよ?」


そういうリナリーはうっとりと●●●元帥を見つめている。確かに、雰囲気も優しくて柔らかい。だからアレンは信じられなかった。


「なんであのひとの弟子がああなるんだろ…」


小さく呟いた言葉はリナリーに聞こえていたようで、確かにと頷いた。そのとき師匠と楽しそうに(師匠は無表情だが、)話していた元帥がこちらを振り向いた。


「そういえば挨拶がまだだったわ。ごめんなさいねぇ、新しいこ?」
「あ、はい!アレン=ウォーカーといいます」


綺麗な笑みを絶やさない元帥は、自分の名前を聞くと少し驚いて、その後すぐに嬉しそうな顔をした。


(うわ、まぶしっ)
「あらまあ!あなたが?クロス、このこがあなた弟子なの?」
「…なんで知ってんスか」
(敬語!?)
「師匠にはお見通しなのよぉ、ふふ」
「…」
「よろしくね」
「あ、はい!」


あなたと違って礼儀のいいこね、クロス?
鈴の音のような声に師匠は反応しない。それを笑顔のまま数秒見つめると、●●●元帥はアレンたちのほうを見た。


「久しぶりの再会で積もる話もあるの…悪いんだけど」
「あ、はい!わかりました。行きましょ?アレン君」
「え?あ、失礼します!」
「ごめんなさいね?また後で」


ふわり、と手を振る元帥の後ろで、師匠の顔が一気に青ざめた気がするのは、僕の気のせいだろうか。


モクレン

(…さあ、クロス?)

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