伏せた瞳には映らない

「っジュンコ…!」


私たちに気づいた伊賀崎くんは、ジュンコちゃんを見るや否や此方にすっ飛んできた。しかし、そのジュンコちゃんが巻き付いているのが私だとわかると顔は険しくなる。おお、怖い。凄く睨まれてる…。
仕方がないと思う。私はくのたまだし、彼と直接話したこともない。幸い、ジュンコちゃんが庇うように鳴いてくれたから、警戒心は弱くなったみたいだけど。ありがとう、ジュンコちゃん。お礼の意味を込めて撫でる。なめらかー。

「はい、貴方の蛇でしょ?くのたまの敷地に来てた」
「あ、あぁ…ありがとう…」


腕を伊賀崎くんの肩へ伸ばす。非常に賢いジュンコちゃんはスルスルと伊賀崎くんの首へ戻っていった。うん、定位置。


「私蛇はあまり得意じゃなかったんだけど…ジュンコちゃんは特別みたい」
「え?」
「とても綺麗だし、可愛い」
「!」
「じゃあね」


もう用もなくなったのでさっさと踵を返す。またジュンコちゃんに会いたいなぁ。


伏せた瞳には映らない
(あんなこ初めてだ…ね、ジュンコ)
(シャー)

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