角砂糖は黒で

「マスルールウウウウゥ!!」


穏やかなシンドリアの朝、王宮には敷地中に響き渡るような怒号が響いた。女性の声に、城の人々は動揺することはない。柔らかな笑みと共にこう思うだけだ。ああ、今日も平和であるな、と。
肩を怒らして宮中を走っているのは八人将の一人、シンドリアきっての剣士、●●●である。ふわふわと髪を遊ばし剣を片手に走っている姿は凄まじい。●●●は同じ八人将のマスルールを探しているところだった。


「あいつ、また鍛練サボりやがってっ…!」


居場所は大体わかる。伊達にほぼ毎日探してない。天気や気温、時間帯から叩き出した本日の昼寝場所に●●●はよりいっそうスピードを上げて向かった。


「見つけたっ…」


王宮の裏の一番日当たりのいい場所。探し人はそこにごろんと寝転がって、昼寝をしていた。
小鳥と一緒にすやすや眠る姿は可愛らしい…なんて思うわけない。


「マスルール!」
「……」
「お き ろ !」
「…何スか、センパイ」
「何スかじゃない!」


剣の修行を、私との手合わせをサボったのはこれで何度目になるのだろうか。詫びれる様子もなく、むしろ少し不機嫌な後輩に私は怒りが募る一方だ。


「何回言ってもサボりやがって」
「…」
「私に負けるのがそんなに怖いのか!」
「…」
「そんなに、そんなに」
「…」
「…私といるのがいやなのか…」
「……」
「わ、私が嫌いなのかよお…ぐず」
「……ハァ」


ダメだ、泣いちゃダメ。年上なんだから。そうは思えど、感情は沸き上がる一方で。だって仕方がないじゃないか。好きな人に避けられちゃ、私だってつらい。その上溜め息まで吐かれちゃ、もうどうしょうもない。


「う…」
「…センパイ」
「…ひっく…」
「別にセンパイのこと嫌いだからじゃないッスよ」
「ぐず…」
「むしろ好きなんで」
「……ばか」


角砂糖は黒で

(一緒に寝ます?)
(…ずび…うん)

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