05



あれからもう少し彼と話した。実に様々なことを話していたのだが、彼の方は心身共に疲れていたようで今はもう寝ているらしい。らしい、と言うのは完全に彼を把握できないからである。確信に近いが、なんせまだ自分も慣れていないためそういう言い方になる。
あとは、話しているうちにわかったことが二つある。一つ目はスクアーロ自身、声に直接出さずとも自分と会話ができるということだ。つまり心の中だけで会話が成立する。これには向こうも心底ほっとしていた。当たり前だ、そんなの恥ずかしすぎる。完全にイタい人じゃないか。…中の私だって嫌だ。ニつ目はある程度意識すれば互いに自分の声をシャットアウト出来るということ。まぁ、これで私はともかく少年のデリケートなプライベートは守られた。映像と音が消えないというのは非常に、非常に残念なことだが、そこは自分の順応性と日々の鍛錬で鍛えられたメンタルに任せるしかない。まだまだわからないことは山ほどあるが、それはまた後々解いていくとしよう。
今日は今まで生きてきた中で一番疲れた日だった…彼の人生を知る限りこれからはもっと疲れるのだろうけど。あの上司からの暴力に俺の方が耐えられる気がしない。そういえば、スクアーロがヴァリアーに入るのはいつ頃だそうか?今年で十二歳だといっていたからそろそろボンゴレとも関わりを持つ頃だろう。
幸い、自分は頭はいい方だ。記憶力にも多少自信はある。自分はスクアーロを…自分をサポートするだけ、それでいいだろう。あまり原作に関わろうとは思わない。まぁ、スクアーロの中にいる時点でそれは不可能なのだろうが…
嗚呼、もう本当にくたくただ。人格だから疲労は感じないが、彼の身体状況が多少なりとも影響するらしい。睡眠は体を休める行動なのだから、きっと眠らなくても大丈夫だろう。だがそれでは自分が自分でなくなったようで怖くなる。このことについてはまた明日にでも彼と相談しよう。
真っ暗になった"視界"に目を向け、自分もゆっくりと目を閉じた。

♂♀


(―――い―――!)
(―ん…?)
(――――鯱!!)
(っうわ?!)


腹に来る大声、びっくりして目を開けると目の前はもう明るかった。どうやら移動中らしい。…夢じゃなかったのか…


(やっと起きたかぁ)
(…スクアーロ。おはよ)
(お゙ぉ、にしてもお前よく寝るなぁ)
(あはは…あ、そのことなんだけどさ)


♂♀


(便利じゃねぇか)


自分の相談を一通り聞いて、スクアーロの声にならない第一声がこれだった。只今は朝食中。これまた朝からガツガツと凄い量を平らげていく。朝には些か胃によろしくないのでは、と思うような目の前の数々の料理に顔が引きつるのがわかる。


(何が便利だ。こっちは困ってるから相談してるってのに)
(寝なくていいことの何に困ってんだぁ。今日だって寝てたじゃねぇか。)
(…人の話聞いてた?お前も関係あるんだから飯ばっか食ってないで考えろ)
(ゔお゙ぉい…急に口悪くなったなぁ゙)
(そうか?こっちが素だ。)
(…マジかぁ)
(マジだ。で、俺はどうしたらいいと思う?)
(……あ゙ー…寝れんだったら寝てりゃあいいんじゃねぇかぁ?一晩中起きてんのは暇だろ)
(…それもそうだな…よし、そうする。起きててほしいときは言ってくれ)
(お゙お)


そう心の中で言うと、スクアーロは再びガッつき始めた。それにしたって…


(どんだけ食うんだ)
(別に普通だろぉ?)
(あー、うん、そうだな)


お前からすればな、という言葉は飲み込んでおいた。何を基準に普通なんだ。


(…そういえばさ、)
「あ゙?」
(声でてるって)
「ゔおっ、」
(ふはっ、あのさ、スクアーロが話せるのはイタリア語だけか?)(…いや、英語とあと三、四ヶ国語は話せる)


スクアーロは俺に笑われたのが嫌だったようで、少しむくれているみたいだ。心の中のもやもやした感情が中の俺にはよく分かった。可愛いなぁ。


(へぇ、意外と頭いいんだな)
(テメェ…、上に無理矢理叩き込まれてるからなぁ)
(上?)
(ボンゴレって組織だぁ。マフィアのな)


ため息と一緒に吐き出されたボンゴレの言葉。驚いた、もう接触済みなのか。そう思った刹那、小さな痛みと共に俺の頭の中に小さな記憶が流れ込んできた。スクアーロの、過去だ。


(はー、成る程。ちっさい時にスカウト…)
(なんで知ってんだぁ……お前ボンゴレがわかんのかぁ?)
(あー…ま、スクアーロの人格だからな)
(なんだそりゃ)


これ、逆パターンもあったりするんだろうか。だとしたら相当ヤバい。性別バレるじゃんか。あ、でも私とはわからないか。そこはスクアーロの馬鹿さを信じるしかない。お願いだスクアーロ、馬鹿であってくれ。



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