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 春が来た。あの一件以来、ディーノにちょっとした変化が見られた。なにやら自分の中ですっかり壁が取れてしまったらしく、スクアーロに緊張することがなくなっていた。スクアーロは全く身に覚えがないうちに急に馴れ馴れしくされているので、たいそう邪険にしていたが、吹っ切れたディーノは強かった。ぬけているのか鈍いのか、怯えることはあっても、スクアーロから離れることはなかった。離れる離れないといっても、ディーノは決してスクアーロにべったりなわけでない。むしろ近寄ってくるのはまれだし、話すことも滅多にない。それでも、この二人が一緒にいるのは他人から見れば奇妙でしかなかった。完全に諦めきったスクアーロに、鯱は苦笑した。少し悪いことをしただろうか。もともとは自分のせいである。しかし、この状況を一番喜んでいるのは鯱であった。

 (スクアーロに友達か…)
 (う゛お゛ぉぉい゛…まさかあの金髪のこと言ってるんじゃねぇだろうなぁ…)
 (そうだ)
 (冗談はよせぇ!)
 (またまた〜、好きにさせてるくせに)
 (うっぜぇ!興味ないだけだぁ!)

自分がいくら否定しても鯱はくすくすと笑いを漏らすだけで、全く信じていないのがよくわかる。スクアーロは少し苛立ちを覚えつつ掲示板へと向かった。今日からはクラスも組み直され、教室も変更になる。新学期というわけではないが、この学校では実力に応じてクラスを振り分けるため、半年に一度クラスが練り直されるのだ。掲示板の前には当然人だかりができていた。一番手前に見知った金髪を見つけて、スクアーロはげんなりした。どうせ他の奴らを割って入れず、新しいクラスが見れなのだろう。向こうもこちらに気付いたようで、もともとキラキラした顔をより一層輝かせてみせた。スクアーロはジャンやドニと違うこの明るさがとてつもなく苦手であった。

 「よう、スクアーロ!」
 「朝っぱらからうるせぇぞぉ゛…」
 「あ、ご、ごめん…それにしてもすごい人でよなぁ、さっきから全然見れなくてさ。」
 「…Dだぁ」
 「えっ」
 「お前のクラス」
 「あ、ありがとうスクアーロ!お前視力いいんだな!」
 「う゛お゛ぉい゛、だからうるせえっつってんだろぉ゛!お前がチビなんだぁ!!」
 

しまった、とスクアーロは舌打ちを漏らした。いつものことながらあまりに不憫だったので、ついいらないことをしてしまった。鯱に似てきたのか、最近は自分までお節介になってきたように思う。こんなことをするから寄ってくるんだ、とスクアーロは己に悪態をついた。

 (…)
 (…)
 (…)
 (う゛お゛ぉぉい゛!!ニヤけてんじゃねぇぞぉ!!!)
 (別にニヤけてないが)
 (嘘ついてんじゃねぇ!!!)
 「なぁ、スクアーロもDか?」
 「んなわけねぇだろ!たたっ斬るぞぉ!!」
 「ひっ、え、ご、ごめん!!」
 

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