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ディーのは焦っていた。実習が上手くいかないというのもあるが、まあそれはいつものことであり、今はそんなことはどうでも良い。緊張と困惑で冷や汗をかいたまま、なぜか特別教師として自分を監視する家庭教師をみた。

「ど、ど、どうするんだよ、リボーン!」
「どうするもこうするも、お前が礼を言いたいっていうから気絶させてやったんだぞ」
「なんで気絶させる必要があるんだよ!?」
「うるせぇな、引き留めてやったんだからさっさといけ。…ん?目が覚めちまったみてえだな。思ったよりはやいぞ。」

バッと視線を戻すと、ちょうどスクアーロが身を起こしたところだった。ずっと前にズッコたちに絡まれていたのを助けてもらってから、関わったことはない。そのお礼を言いたかったのだが、今まで勇気を出せずにいたのだ。隣の家庭教師は最近そのことを知ったらしく、久々に学校へきたスクアーロを逃すものかと石を投げた。そして現在である。

「ほら、行っちまう前にとっとと行って来い。ボスは礼儀を弁えてるもんだぞ。それとも撃たれいのか?」

とても幼児とは思えない笑みを浮かべて愛銃を向けてくるリボーンに、ディーノは逃げるように茂みから飛び出した。

「う゛わ!?なん、え?」
「あ、あ、えと…す、スペルビ・スクアーロだよな?」
「お゛、お゛う……なんか用かぁ」
「え、えっと、その、えっと…」

言え、言うんだ俺…!そう心の中で叫んでみるものの、なかなかもう一息といかない。スクアーロにキレられやしないかと恐る恐る視線を上げると、以外にもスクアーロは眉間に皺ひとつ寄せていなかった。それどころか自分が言うのを待ってくれているように見える。もしかしたら、実はいいやつなのかも…。そう思うと少し緊張も和らいだ。

「あ、あのさ…この前…ずっと前に助けてくれただろ?」
(……いつだろう)
「そのときのお礼が言いたくて…あ、ありがとう!」

言った!言えた!!ちゃんと言いきれたことがすごく嬉しい。自分にとっては大きなことだ。達成感にスクアーロへの恐怖なんて素っ飛んでいた。

「お、おう゛…気が向いただけだから気にすんな゛ぁ」

スクアーロらしくない、たぶんほかの奴らも見たことがないだろう笑みを浮かべてスクアーロはそう言った。声もいつもと違ってずいぶん穏やかで、自分の中のスクアーロとは全く違う。なんだか胸のあたりがポカポカする。もっと話したいと思った。

「完全に懐いちまったな」

花を散らす教え子を見て、リボーンは呆れながらつぶやいた。教え子のファミリーに入れてやりたいが、生憎あいつはヴァリアーで、しかも剣帝のお気に入りだ。こればかりは諦めるしかない。

「惜しいな…」


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