(ふうん…生命エネルギーねぇ…)
(スクアーロは見えないのか)
(……)
(…ま、これからだよ!若いし!)
(うるせぇ!)
自分にはみえないものが、剣帝や田上さんに見えるのが気に食わないらしく、スクアーロは拗ねてしまった。乱暴にドアを開け、部屋をでる。持ち物は剣だけ。教科書なんてものは残念ながら持ち合わせていない。鯱は暫く、くすくす笑いが止まらなかった。
(そういうことだから、田上さんと剣帝は俺のこと気づいてるみたいだから)
(あ゛ぁ)
(言う必要はないけど、そんなに気を張らなくてもいい。よかったな)
(…別に)
かわいらしいなあ。また笑いが込み上げてきた。
♂♀
「弱ぇ!弱ぇぞぉ!!」
午前中は少し本格的な実習だった。本当に少しだけで、ヴァリアーというプロの集団で命のやり取りをしているスクアーロには、せいぜいごっこ遊びだ。武器の使用が可能という点はそういう学校なだけあるが、殺し厳禁というのもスクアーロからすれば生温かった。剣についた血を振り払う。肩を押さえて、恐怖に濡れた顔をむけるクラスメイトを一睨みして踵をかえす。
(つまんねぇ…)
(そうやって油断してると、痛い目みるぞ)
(ハッ、雑魚ばっかで油断もクソもお゛!?)
少し得意げに言っているスクアーロの後頭部に、突然の強い衝撃。鯱は言わんこちゃないと一言言ったやりたかったが、なぜか自分まで意識が薄れていく。その口は開かれることなく、鯱はゆっくりと目を閉じた。
(……ん゛)
五分と経っていないだろうか。スクアーロは目を覚ました。
「…あ゛ー…は?」
がばり、と身を起こす。その目つきがいつもより和らいでいるのは、単に驚いているからではない。鯱は頭をかかえた。
「…まじか」
意識が入れ替わってしまったからだ。
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