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そろそろ来るだろうか、いやまだ早いか。そんなことを考えながらベッドの上で時計を気にしていると、軽いノックが聞こえた。


(お、きた!)
(…や、気配が違ぇな。こいつは…)


少し考えて、スクアーロは返事をせずにドアを開けた。少し逆光で見えづらいが、ニコニコと笑う男は二人の顔見知りだ。


「や!」
(あれ)
「や!じゃねぇよ。なんでお前がここに居るんだぁ?ヴィトー」
(隊服羽織ってる…ヴィトーもヴァリアーなのか?)


ヴィトーの肩にはスクアーロと同じ、ヴァリアーの隊服。随分とラフに気崩している。スクアーロはそれをチラリと見て、ちょっと眉を潜めた。


「お前もヴァリアーだったのか?」
「そう、実はね、」
「ああ!?スクアーロっ、それを押さえておいてくれ!!」


バタバタという足音と共に走ってきたのは一時間前に会ったばかりのタガミだった。顔は驚きと怒りに染まっており、その指はヴィトーを指している。スクアーロは反射的にヴィトーの両腕を掴んだ。


(何事?)
(俺が知るかぁ!)
(田上さん、凄い顔してる)
「…お前、なんかしたのかぁ?」


冷や汗をかき、明らかに焦った顔をしているヴィトーがスクアーロに答える前に田上が追い付いた。副隊長をここまでおこらせるなんて、一体この男は何をしたのだろう。


「はあ…ボス!まったく、ちょっと目を離した隙に抜け出して!なんですか?あのメモは!」
(………ん?)
「え、ちょっとスクアーロ迎えにいってくるねって…」
「内容を訊いてるんじゃねぇよ!全然仕事進んでないじゃないですか!」
(え…ちょ、スクアーロ)
(…)
(スクアーロ?)
「だって、デスクワークばっかりやだー」
(スクー、スクアーロー)
「あんたが溜めたんでしょ!ほら、仕事に戻ってください。スクアーロは私が案内します。」
(おーい…スク!)
「ぉわ゙!あ゙…ち、ちょっと待てぇ!」


状況について行けていないスクアーロが、なんとか意識を取り戻した。半分放心状態のまま、ヴィトーをみる。ヴィトーは思い出したような顔をしたあと、今まで見たことない、ニヤニヤした意地悪そうな表情をみせた。


「ボス?」
「うん、ボス」
「誰が」
「俺が」
「…どこの?」
「ヴァリアーの!」
「は…はあ゙ぁぁあ゙あ゙!?」
(うわっ、嘘!上司だったのか?)
「…まさか、あんたって人は…」


田上はスクアーロのリアクションを見て、大体わかったのだろう。キッとヴィトー…否、テュールを睨み付けた。


「あっは、大成功ー!ビックリした?」
「はぁ…」


悪びれる様子もなく、寧ろ嬉しそうな自分のボスに、タガミは頭を抱え、スクアーロと鯱は開いた口が塞がらない。次の瞬間、スクアーロは自分のボスは敬うに値しないと判断した。鯱は会うたびのテュールの目を理解すると共に、今までのスクアーロの非礼を心底後悔してその場で蹲った。

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