壁に投げつけられて、電池が飛び出て黙り込んだ目覚まし時計を発見したのは午前八時を回ろうかという時間だった。寝坊をした瞬間の、ああやらかしたなって頭が真っ白になる感覚は何回やってもぞっとする。飛び起きて、制服のワイシャツを掴んで勢いよくそれに袖を通す。学ランのボタンを止めながら部屋を飛び出して階段を駆け降りると、心得たものですでに用意されているパンを掴んで呆れ顔の母さんに行ってきます、と怒鳴る。起こしてくれればいいのに。起こしたわよ、何回も。お決まりのやりとりをする。

学校に間に合う唯一の手段であるバス停に向かって全速力で走るけど、信号に二回引っかかった時点で、本格的に今日はついてない日だ。信号にもたついてる間に、目の前でバスが発車する。次のバスは一時間後だ。遅刻確定。

バスが通り過ぎたあと、道路のむこうに、俺とおんなじ不幸な学生が突っ立っているのが見えた。見慣れすぎた学ランを着ている。あっちも遅刻か、と思ってまじまじとその人をみていたら、見事に目があった。

あれは…。

先輩だ
後輩だ





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