「今日の出陣はこれでおしまい、です。お疲れ様、ほんとにありがとう。皆どっか痛いとことかない?大丈夫?」 簡単な日課から順番にこなし、資源を稼ぐ。その資源を使って低コストで鍛刀し、とりあえず揃えた6人で出陣してもらったわけであるがその6人がまた凄い。近侍は勿論歌仙くん。歌仙くんとの最初の鍛刀でできた五虎退ちゃん、なんとびっくり男の娘の乱ちゃん、男前な薬研くん、三人のお兄さんの鯰尾くん、歌仙くんの知り合いだった小夜ちゃん。右も左も分からない私の慣れない指揮でもこの6人は臨機応変に動いて敵を倒してくれた。おかげで今日は一度も負けることなく10回の出陣を終えることができたわけである。 うんうん、上々ではなかろうか。 政府のおじさん達に提出する書類にこの活躍をどう書き記そうか考えているとついと遠慮がちに袖を引っ張られた。犯人は白くて気弱な虎の子。 「主様…あの…」 「ん?怪我した?」 「あっ、えっと、今日一日頑張ったので、撫でて、くれませんか…?」 ぎゅん。 体の中のものが締め付けられて唇に力が入るのを堪えきれない。 「…ッ、か、わ…っ!ありがとねぇ、かっこよかったよ五虎退ちゃん!」 「わ…、えへへ…」 目線を合わせるように屈んでふわふわの綿菓子みたいな髪を撫でるとこれまた甘い笑顔を見せてくれるものだから、審神者ちゃん危ない道に堕ちそう。顔の緩みも隠さずに手を動かし続けていると横から何かに抱きつかれて、花のいい香りが広がった。 「主様ー!僕も僕もぉ!いっぱい撫、で、て…?」 「乱ちゃんいちいちえっちな言い方するねぇ、可愛いなあ」 帽子を取った桃色の綺麗な髪を梳くように撫でる。子供特有の細くて柔らかい髪ってどうしてこんなに可愛いんだろう。撫でれば撫でるほど香る女の子の香りを楽しむ私に、さっきから真っ直ぐに鋭い視線が突き刺さっている。 そう言えばあの子はよく誉を取っていた。 「小夜ちゃん、おいでおいで」 「…ボクを撫でて、どうする気?こんなことしなくてもいつでも復讐のお手伝いはするよ」 「んん…、私復讐したい人とか特にいないし頑張ってくれたから撫でてるだけなんだけどなあ」 黙り込んでしまった彼の硬い髪を撫でる。理由は知らないけれど復讐に突き動かされる彼と、そんな物騒なことに縁のない私。二人とも困ってしまって会話が途切れたのを五虎退ちゃんが心配している。ここは一つお姉さんが気の利いた言葉を、と考えていると小夜ちゃんが小さくでも、と言葉を落とした。 「でも、それじゃあ僕は…ここにいる意味が…」 「あ、実は私知ってるんだよねぇ〜。小夜ちゃんお兄ちゃんいるでしょ。私と一緒にお兄ちゃん探さない?」 「え…?」 「お兄ちゃん見つけるまでここにいてくれないと私困る。小夜ちゃんがいないとお兄ちゃん達来てくれないかもしれないし」 「…わかった」 少しだけ小夜ちゃんが笑ってくれた。 いつかもう復讐なんかしなくていいよ、って笑って君に言えたらいいな。 「んふふ、よかったー。あ、薬研くん。薬研くんもありがとね」 「大将もお疲れさん」 「お、わ…」 ここにきて初めての反撃! 私よりも少し小さいか同じ位の背丈の薬研君が頭の上で数回、優しく掌を弾ませる。ちょっと照れた。 「別に何もお疲れてないよー」 「大将も出陣しただろ?初陣だからって戦場について来たのはビビっちまったけどな。ありがてぇが大将にだけは怪我させたくねぇから今度からはここで帰り、待っててな」 「や、薬研ニキ…!!!」 私がギャップ萌えに弱いのを知ってての行動か!? にき?と聞き慣れぬ言葉に不思議そうに少し首を傾げるもイケメンスマイルを保ったままの薬研くんに私はもう柄まで通された気分。そんな私の視界にぴょこんと跳ねるアホ毛が写り込んだ。 「俺も撫でてくれますかー?」 「あ、おー…っと…、さ、触っても、いいの…?」 「弟達には普通なのに、なんでかなあ?ねえ、歌仙さん。あ、あれならもっと他のところも触っていいですよー?」 「やだなー、もう。あははははー…」 この子こんな可愛い顔して何言ってるんだろう。とりあえず笑え、場の空気が悪くなるか否かは私の対応にかかっている。私は今、試されている! 「…君はそれだから駄目なんだと思うよ」 小さい子は気兼ねなく接することができるけれど、鯰尾くんのような青年からはそうもいかない。私みたいな今日初めて会った他人に触れられても構わないのだろうか。 まだ距離感を掴めていない私に対して下ネタを振ってくるくらいだから気にしない人なのかな。…小さい子だけ褒めるのも逆にね、皆頑張ってくれたんだし平等にお疲れ様の意を伝えたいだけだもんね、いいよね。 「…?主?」 「歌仙くんも、撫でる…?」 「………。お願い、しようかな」 少しだけ眉間に皺を寄せてむず痒さに耐えながら頭を下げる歌仙くんがどうしようもなく可愛く見えてしまって、暫く撫で続けたら怒られた。髪が乱れるって。 バイト続けられそうです。 |