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きっかけは三日月が乱ちゃんに水をぶっかけたことだった。
「きゃあ!も〜〜!ちょっと三日月さぁん!」
「おお、悪い」
乱ちゃんの悲鳴に釣られて部屋から顔を出すと水濡れの彼と手桶とひしゃくを持った三日月、それと少し離れたところに畑当番に勤しむ大倶利伽羅と長谷部がいた。乱ちゃんの服とそこら一帯の地面の色が濃くなっている。水やりか?畑は向こうだけど、三日月はここにも何か植えたのか。
「どういう…?」
「主〜!三日月さんに水も滴る超絶美少女にされちゃったんだけどぉ!」
「いや、本当にすまん。打ち水をしていたんだが、ぼうっとしていた…」
打ち水って、もう昼だけど。申し訳なさそうにオロオロしている三日月に対して乱ちゃんもそこまで怒ってはいない様子。今日もいつも通り暑くて日差しもきついけれどいつまでもこのままでは駄目だな、着替えさせなければ。
「それはいつもでしょ〜!やだ、パンツまで、」
フリルを摘み上げて柔らかそうな太ももを覗かせていた乱ちゃんは一瞬のうちに何か黒い物に頭から覆われた。きょとんとする乱ちゃんの帽子が、かけられた布の重みのせいで少し傾いていてとてつもなく可愛らしい。
やったのはさっきまで畑にいた大倶利伽羅だった。
「一期一振に着替えを頼んでくるからここで待ってろ」
「え、うん」
汚れた軍手を私に預けた大倶利伽羅は、それだけ言って彼のジャージを被った乱ちゃんと唖然と立ち尽くす三日月と私を置いて回廊を歩いて行った。向こうでは満面の笑みの長谷部がたぶん私に向かって千切れんばかりに手を振っている。ちょっと待って。
「…なに、今の?うちの彼氏かっこよくない?えー!私もしてほしー!」
「ちょっと汗くさぁい」
「うそ、嗅がせて」
「主はああいうのが好きか。よしよし、じじいがやってやろうな」
「三日月なに脱ぐの?その青いの脱いだらやばくない?」
こういう訳で、私の作戦は開始したのだ。

「いい?三日月?大倶利伽羅が来たら思いっきりやっちゃって。顔は狙わないでね。ブスになるから。オッケー?」
「あいわかった」
「ほんとこの前はありがとうございました、大倶利伽羅さん!」
乱ちゃんが大倶利伽羅を誘き出してきた。私もツンツンな大倶利伽羅に少女漫画のように優しくされたい。大倶利伽羅にジャージを着せてほしい。そのためだけに三日月と乱ちゃんの協力を仰ぎ、大倶利伽羅の目の前でわざとびしょ濡れになることにしたのだ。さあ、今度は思う存分私に打ち水して。
「よいしょ」
「キャー!……待って足しかかかってない」
「ふむ…難しいな」
「もー!早く早く!大倶利伽羅いっちゃうから!テイク2!」
「どっこい」
「い……ってきもかかってない!」
三日月がこんなにノーコンだったとは!視線を感じて大倶利伽羅の方に目を向けたがもうそこに彼の姿はなかった。代わりに苦笑いの乱ちゃんだけが尚も水をかけ続ける三日月と私を見ていた。私の戦いはまだ始まったばかり…。