「ねえ、ボス。あたしがそのおとり役、やる。」

今遂行中の任務が思うようにいかず、最悪のパターンに備えた囮を使う作戦が浮上した時に、姫はこう言った。


馬鹿か、この女。
考えが浅はか、短絡的、それに、
自分の女に危険が伴う囮なんざやらせるほど堕ちてねえ。

「ダメだ。」
「なんでー?!」
「てめえの技力がまだ足りてねえよ。」

技力はある。しかし、こうでも言わないと、こいつは納得しないだろう。

俺がそう言うと、否定出来ずに、でもやりたそうな目でこっちを見る姫を無視し、適当に話を再開させる。

しかし、結局姫が囮をやる作戦に決定したのは、その会議をしている時に敵が先手に出たからだ。
もう時間がない。そう判断したのは幹部もおなじだった。


幹部は全員、各々に殲滅し、敵は壊滅状態。それが出来たのも、姫の囮が成功したからなのだが。
敵を殲滅し終え、撤収命令を出したはずだが、
姫が帰ってこない。

もしかしたら、敵にバレて捕まってんじゃねえか。
やっぱり行かせるんじゃなかった。
適当にカス鮫あたりを行かせるべきだったか。

「ボス、王子が探しに行ってこよーか?」
「厭、いい。」
「姫やばいんじゃね?」
「俺が行く。」

心配かけやがって、あの女。
運良く生き残ってる敵に捕まってたりしたら、その敵殺すどころじゃ済まねえぞ。


「あ、ボス〜!この花あげる、綺麗でしょ?」

俺が姫を探そうと本部の庭に出たら、ひょうひょうと何食わぬ顔で姫が出てきた。

手には泥とかすり傷がついてるが、かすり傷はどうせ花を摘んでる時に草で切ったものだろう。

「あれ?ボスなんか機嫌悪い?この花嫌い?やっぱ花とかそーゆーのは「てめえ、俺がどんだけ、…。」


心配したのかわかってんのか。


「‥もういい。帰るぞ。」

そんな言葉を言うまでもなく、こいつの持ってる花を持ち、歩き出す。


飲み込む一言

(彼女の特技は、)
(彼を心配させる事。)



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テーマ「人外ファンタジー」
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