「お前の手料理が食いたい。」 ボスの頼みとあらば、作ってしんぜよう! ….嘘。 大好きなボスのために、いろいろ理由をつけて、あたしの料理を一回食べてもらいたい。 だって、それぐらいしかボスの気を引く方法が思いつかない。 「今日はあたしがご飯作るね。」 あたしがヴァリアーのみんなにそう宣言すると、反応はあたしの予想とは打って変わって、ひどいものだった。 「げ、姫の…?」 まず、そう口火をきったのがベル。たった今も、甘いお菓子を頬張っている。 ひっどい王子だよ、全く。 「何か問題でも?」 あたしはふつふつと沸き起こる怒りを抑えつつ、ぶっきらぼうに言った。 「問題はねえが、…食い物になんのか、姫の料理は。」 スクアーロにまで言われると、ずきっとくる。 第一この人達、あたしの料理一回も食べた事ないんだよ? なんで、あたしが料理下手なこと前提で、話すかな。 「ミーは遠慮しとくんでー。」 ふ ら ん ! おまえもか。 ルッスはしきりに、「わたしも、手伝うことある?」って訊いてくるし。 肝心のボスは、少し驚いた顔をしたけど、瞬時に口角をあげ、挑発するような目で、あたしを見た。 あたしが、ボスへのアピールのために料理作るのなんて、彼にはお見通しなのかも。 スクアーロとベルは相変わらず不安げな表情だけど、問題ない。 いいよ、みんなにあっと言わせてやるんだから。 これでも、ヴァリアー入るまでは、料理見習いだったんだからね。 「は。」 「これ、姫が作ったとか、嘘だろ?」 「シェフの味がしますー。」 「でしょー?あたし、料理上手いんだよ。」 「信じたくねー。」 「ミーは知ってましたよ、姫。」 「嘘吐くな。」 「げろっ。」 「…美味いぞお、」 「ありがと。」 「…」 「ボス、はどうですか。」 「あ?」 「あの、…味。」 「ああ。」 「美味しくないですか。」 「悪くねえ。」 「、ありがとうございます。!」 やったー! ボスが美味しいなんて言うわけないけど、ボスの‘悪くない’は、十分な褒め言葉だ。 作ったかいがあったなあー。 また、みんなに作ってあげよ。そしたらボス、また食べてくれるかな。 「おい、」 「あ、はいっ。」 「次は俺だけのために作れ。」 味付けは愛で! (ミーも食べたいですー。) (蛙は黙っとけ。) (うわ、堕王子も食べたいくせに。) |