4月1日。
エイプリルフール。
ついにやってきた、この日が。ヴァリア-の本部には、互いを探り合うような変な雰囲気。もちろん、誰が一番上手くみんなを騙せるか。エイプリルフール1日を使い行われる言わばゲームのようなもの。去年の優勝者はベル。去年の同じ日、ベルが「王子、次の誕生日が来たら、王子じゃなくて王になるんだよなー…」って、呟いたの!しかも、聞こえるか聞こえないかぐらいの声で。みんな気が緩んでて、まさかそれが罠だと知らず「え?!?王子の次があんの?!」「うお゙ぉ゙ぉい!王、とはたいそうな身分だなぁ゙?」「むむ…お金持ちになるのかい?」「…ドカスが、」「ベルちゃん!それはパーティーしなといけないわねっ!」
「王…か。」…この騙されよう。優勝者は、みんなの投票によって決まる。優勝者は、みんなに一つずつ命令出来るから、みんな必死。去年ベルは、全員に「王子の喜ぶ事しろ。」って。あたしはたしか、牛乳3ヵ月分負担したはず…。だからこそ!今年は負けられないの!ボスは、参加してるのか、してないのかよくわかんない。多分あほらしい、とでも思ってるんじゃないかなー?
「姫!顔にケチャップ付いてるぞぉ!」「うっそ?!朝オムレツ食べたからっ!…って。…や、やられた…」「今年は俺が優勝するからなぁ!」
や、やばい。スクアーロに一本取られるなんて…。あたしも腕がなまったもんだわ。スクアーロなんかに優勝は譲らないんだから!それにあたしには今年、とっておきの秘策があるんだし!秘策というより、ちょっぴり願望が入ってるんだけど。…まぁ、どっちにしろ失敗する可能性70%、かっ消される可能性85%!
「あら、姫ちゃん。さっき、マモちゃんが探してたわよ、」「…ほんと?」「あら〜、これは本当よん♪」「そっか、ありがと。」
もうみんな必死で腹の探りあい。普段、暗殺という仕事柄だけに、相手の一瞬の表情を見逃さない。いつも以上に慎重に行動しないと…!
「なぁ姫ー。」
「何?ベル。」
「王子のティアラ知らねー?」
「え?ないの?」
いくらなんでも、こんなお遊びのためにベルがティアラを外すのはあり得ない。という事は、この話はガチな確率が高い…?脳内で瞬時に分析し、対応を考える。かの有名な、独立暗殺部隊ヴァリア-が、こんな馬鹿らしい遊びをしてなるんて知ったら、みんなどう思うだろう?
「まじでねぇの。見つけたら持ってきて。」
「うん、わかった。」
じゃ、と手をひらひら振って去って行くベルの後ろ姿を見送った。……って!「ベル!頭の後ろについてんじゃん!」
「ししっ♪やっと気付いたんだ?王子が、こんな事のために、ティアラ外すわけねぇじゃん。」
「うぅ…やられた…」
「今年も優勝は王子だから♪」
再びししっと笑って、去年の優勝者は去っていった。
「さすが去年の王者…」
簡単には出し抜けそうにない。
「むむ、姫。やっと見つけたよ。探していたんだ。」
再び歩き出そうとしたらふわふわと、マーモンが飛んできた。
「あ、ルッスから聴いた。ごめんね。で、用は何?」
「僕と一緒に、レヴィを騙さないかい?」
…この赤ん坊も出し抜けないわ。まさか共犯者になれ、なんてね。でも、面白そう。しかも、レヴィはすぐ騙せそうだし。
「ふふ…いいよ、」
「用意はもう僕がしてるんだ。」
そう言ってマーモンが取り出したのは、“ボスの字そっくりのラブレター” ボスの達筆激似で“俺はレヴィが好きだ。”と書いてあった。
「うわ。マーモン…これ、ボスにバレたら即あの世だよ、」
「承知さ。だから君に頼むんだ。」
「な、なにそれ。ちょっとひどくない?」
「むむ…姫は勘違いしてるよ。これを、姫がやった事にして、もしバレてもボスは、君に手を出せないからね。」
「え?どういう意味?」
「やっぱり気付いてないか。とにかく、君がどんな事をしてもボスは許してくれるよ、多分。」
「それはないよ!あたしだってすぐあの世行き…。まぁいいや。バレる前に逃げればいいし!」
そうしてあたしたちは、今。
レヴィに手紙を届けたところ。
「こっ…こっ…これは!」
「ボス、ああ見えて恥ずかしがり屋だからさぁ、あたしが渡してくれって頼まれちゃった。」
「ボ…ボスがこれを!」
そして、鼻血を流しながらレヴィはボスの部屋に走って行った。
「…なんかちょっと可哀想。」
「姫、同情は禁物だよ。これは、言わば自分の全てを賭けたゲームだからね。」
「そんなに壮絶なものじゃないと思うけど…」
→後編へ続く




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