「ねー、もう無理!」
「何が。」
「人生が!」
「っは…くだんねえ。」

…馬鹿にされた。
あたし、真剣に悩んでるのにさ!
目の前のソファに、どかっと座っているボスを、睨む。
人が悩んでるって言うのに、なんで若干笑ってるんだろう、この人は。
「てめえが悩むなんて、珍しいじゃねえか。」
でも、
ちゃんとさりげなく心配してくれるんだなー、ボスは。
だから、嫌いになれない。
「もう毎日、なんのために生きてんのか、わかんないんだよね。」
「てめえが言ったら、全く重大な話に聞こえねえのはなんでだ。」
「あたしに聞かないでよ。」
「…まあいい。続けろ。」
さりげな〜くひどい事言って、さりげな〜く次へと促す才能あるよね、ボスは。
「あたしがいてもいなくても、何も変わらないじゃん?」
「…」
「任務では失敗してボスに迷惑かけるし、料理とか裁縫が出来る訳でもないし、馬鹿だし、」
「色気ねぇしな。」
「…追加しないでよ。ひどっ。」
「事実だろ。」
うっわー。
心折れた、あたし。
今の、大人の男がする発言じゃないでしょ!…まあ事実なんですけど。
「で、それだけか。」
「何が。」
「続き。」
「…違う、けど。もういいよ、つまんないでしょ?明らかにつまんなさそうにしてるし。」
なんか不機嫌だし。
まあ、あたしだってもし聞かされる立場だったら、嫌だもん、こんな話。
「いいから続けろ。」
「いや、もういいって「姫。」「はい。」「話せ。」「はい。」
……怖いです、ボスの圧力。
「…だからー…うーん、なんてゆーか、とりあえず、あたしの存在価値みたいなものがわかんないー、って話…?」
あっれ、何故最後疑問型かは不明。
「馬鹿馬鹿しいでしょ。あはは、」
笑えるー。
中2病的な?
あるよね、こーゆー時期。
…あたし中2じゃないけど。
「だから、あたし、今度の任務で死んじゃってもいいかなーって。」
「…」
「それで、ボスが、ヴァリアーが、良くなるんなら、本望だし。」
「…ドカスが。」
うわ、怒られた。
しかもめっちゃ不機嫌。
あたし、何も間違った事言ってないと思うんだけど。
…そ、そうだよね。あたし間違ってないよ、多分。
「てめえが死んだら、迷惑かかんだろ。」
……あー。
それもそーか。
あたし、いちおうヴァリアーだし。
「じゃあ、ヴァリアー辞めて、そしたら、」
…迷惑かかんないよね、
っていうあたしの言葉は、ボスの唇によって阻止された。
いまいち状況が把握出来てないけどさ。
つまり、あたし、
ボスとキスして、
るんですかええええ?
「っ、」
「てめえは俺が死なせねえ。」
「…」
「存在価値だかなんだか知らねえが、てめえは俺のそばにいろ。」
「あの、あたし、…えっと、「なにも考えずにそばにいろ。てめえはそれだけでいい。」
そう言って、いつもより優しいボスは、あたしにもう一度キスをした。

欲しい言葉
(あたしきっと、)
(この言葉を待ってたんだ。)




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