「今夜も、帰り遅いの?」

あなたの答えはわかってる。

頭ではわかってるのに、

「嗚呼。先寝てろ。」

、すごく寂しい。


あたしの彼氏というポジションの彼は、なんの仕事をしているのか、教えてくれない。
でも時々、頬に血をつけて帰ってくる事がある。
初めてあたしがその姿を見た時は、びっくりして泣いちゃったから、そっからは極力普通の姿で帰ってくるようになった。
でも、本当はすごく不安。

「ザンザス、…」
今日も1人で、彼の帰りを待つ。
寂しいよ、
あたしは、
いつまで1人なんだろう?

そんなブルーな時、突然の来訪者。
「お邪魔しますー。姫、ミーの事覚えてますかー?」
「フ、ラン!?」
フランはあたしの幼馴染的な存在だった。
「どうして急に?」
ちょっと大人になったフランを見つめ、あたしは訊いた。
「姫を奪いに来ましたー。」
サラッと言い、サラッとあたしの髪を撫でる。
「そうなんだ。」
へえー。
……。
…、
「…えっ?」
「相変わらず、おもしろい反応ですねー。」
フランはらけらけら笑って、あたしにそう言った。
「奪いに来たって、あたし別に「寂しくないんですかー?ミーなら、姫をこんな想いにさせませんけど。」
「…寂しくない、わけじゃないけど。」
「ミーが愛してあげますー。」
「あたし、は…」
ザンザスが好きだから、
そう言いたい。
でも、
今寂しかったのは事実。
フランがいてくれて、明るくなれたのも事実。

「かーわいー。」
あたしをからかうように、フランは髪を撫でる。
その視線も指先も、全部全部、ザンザス以外の人のもの。
あたしは、
久しぶりの感覚に、戸惑っていた。


「まー、いきなり来たんでダメモトでしたから。」
「…」
「答えは急がないんで。気が向いたら、電話でもして下さーい。」
んじゃー、とフランは嵐の様に去って行った。




「浮かねえ顔して、どうした。」
「あ、なんでもない。」
フランの言葉の意味考えてた、なんて言えないよ。
せっかく2人でいられる少ない時間なんだから。
あたしの、好きな相手であるはずの、彼の横顔を盗み見る。

「言っとくが、てめえを手放す気なんてねえぞ。」
ちょ、
超直感?!
「こっち向け。」
その言葉を言い終わらないうちに、彼の方に顔を向けさせられた。
「ざ、んざす。」
あたし、寂しいんだよ、
悲しかったんだよ?
わかってる?
やばい、涙出てきた。
「不安なら、俺がお前を愛してるって、わからせてやる。」

そうして君は、いつもの様にキスをする。

やっぱりね。
(彼の一言で、)
(こんなに幸せになれるなんて。)



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