「俺を惚れさせてみせろ。」
初めてだった。
巨大マフィアの一人娘として、幼い頃から大切に大切に育てられてきて、欲しい物はなんでもみんな手に入ってきたのに。ぬいぐるみだって、地位だって、ドレスだって、愛だってなんだって。
なのに、
ヴァリアーとかいう組織のボスは、あたしにそう言った。
「…意味わかんない。」
「っは。どこぞのお嬢さまは所詮こんなんか。」
上から見下した態度で、あたしを一瞥する。
…あり得ない!
あたし、お嬢さまなんだよ!?今まで鼻で笑われた事なんてなかったのに!
「じゃあいいわ!惚れさせてやるっ!」

そして、あたしは今。
そんな勢いで言った言葉を後悔しているところ。
だってだってだってだって!
意外にXANXASはモテるんだもん!
あたしがいくら積極的にアピールしたところで、彼にとってはもう見飽きた、という感じだった。
「もう無理…。」
今までこんなに自分からアタックした事もなかったし、これ以上はあたしのプライドがっ。
「お嬢さまとかいうふざけた身分の奴は、底が知れてるな。」
ほら、またあたしを一瞥した。
なんか、もう慣れたけど。この人のせいで。
やっぱり、あたしにこういうのは向いてない。
あたしは、あたしがしたい事をすればいいだけの話。
「ねえXANXAS、」
「なんだ、?」

「あたしの事、幸せにしてよ。」
あたしは、そう言って、彼にキスをする。

だってあたしはお嬢様
(そんなんで、俺が堕ちると思うなよ。)
(難しいのね。)
(…、だが今のは悪くねえ。)



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