ねえ、XANXAS覚えてる?
あたしと、12年前に交わした約束。

「ざ、んざすー!」
「うるせーな、何だよ。」
「大人になったら、XANXASのお嫁さんにしてね!」
「...しょうがねえな、」

あたしは、今も覚えてるよ。


「姫さぁ、この前の中規模マフィアの縁談断わった、ってマジ?!」
「あー、うん。」
この前きた、縁談の事ね。
あたしは、顔を見る前から、あっさり断わった。
「なんて無駄な事してんのっ?あんな良い縁談なんて、滅多にあるもんじゃないよ?」
あたしの友達は、必至だけど。
あたしは、心に決めた人としか結婚しないんだから。
「しかも、ボンゴレの普通の社員である身分のうちらには特に!」
あたしは、ボンゴレの平社員。
ボンゴレ自体は、大きくて巨大な勢力だけど、社員にもなると、ちょっとした試験で、パパッと入れちゃうから、そんなにすごい事でもない。
「わかってるよ、…」
でも、あたしには、
「また、小さい頃の約束とか、持ち出すんじゃないでしょうね?!」
う、言われた。
「だって、XANXASは約束してくれ「姫!」
「いつまでも、過去のそんなガキの記憶に囚われてちゃだめ!」
「…。」
それを言われると、一番困る。
たしかに、友達の言う通りだから。
ただの子供の約束に過ぎないから。
極めつけは、
「しかも、その人とはもう全然連絡とってないんでしょ?!」
これ。
あたしは、XANXASが、今何処にいて、何をしているか、ちゃんとは知らない。
ヴァリアーのボスになった、とは噂で聴いた。
そんな、彼との過去の記憶に囚われているなんて、時々、自分でもバカバカしくなる。
「でも、忘れられないんだもん。」
「いい?もうそんな約束忘れなさい!」
たしかに、友達の言う通りかもしれない。
あたし、大丈夫かな。
「姫ちゃん、ちょっといいかな?」
「つ、綱吉さんっ!」
あたし達が、しゃべっているところに、かの有名な沢田綱吉の姿が。
大人になられた綱吉さんは、本当に素敵な方で、実力もさることながら、その優しさは、多大な人気を誇っていらっしゃる。
「綱吉さん、どうしてこんな所に?」
ボンゴレのトップである彼が、今目の前にいるだけで、びっくりなのに。
彼は、
「少し話がある。」
そう微笑んで、あたしの手を取り、歩き始めた。
え?!
何が起こるのっ?
あたし、なんかしたっけ?!
「大丈夫、悪い話じゃないから。」
う、これが噂の超直感。
そんな事を考えてると、綱吉さんは、立ち止まった。
「僕と結婚して欲しい。」

……
…え?
えっ?え!?
えええええええ?!!?!
「だ、え?ちょ、え、まっ、え?」
とりあえず、
混乱。
「僕と、結婚して欲しいんだ。」
優しそうな瞳で、そう言う綱吉さん。
彼にかつての子供のような面影はない。
でも、待って。
これさ、
断れないだろっっっっっ!!!
かの、ボンゴレの十代目ですよ?
「君の答え、聴かせてくれる?」
微笑みがまぶしい。
あたし、どうする?
どうすればいい?
どうしたい?

「あ、あたし、「待たせたな、姫。迎えに来た。」
「ざ、…んざす、」
あたしの目の前には、あたしが、一番逢いたかった、彼の姿。
「久しぶりだね、XANXAS。」
綱吉さんが、余裕の笑みで言う。
「悪いな沢田綱吉。」
「何の事かな。」
「こいつは、12年前から、俺のだ。」
XANXASのその言葉を聴いた綱吉さんは、あたしの頭を撫で、少し残念そうな目で見ると、その場を去って行った。
「俺と結婚しろ。」
懐かしい、彼の声。
懐かしい彼の眼差し。
懐かしい彼の匂い。
「遅いよ、」
あたしは、彼の胸に飛び込んだ。

12年越しの約束。
(12年分の愛なんて、)
(これから12年かけて埋めるから。)



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