‘深夜の秘密’の続き




あの日以来、あたしは毎日ボスに逢うために、エレベーターで待ち続ける。
話せるのは少しの間だけ。それでも、しばらくすれば、ボスはあたしに、よく笑顔を見せてくれるようになった。
昔には想像出来ないような、幸せな毎日。
不満なんてない。
でも、一つあげるとしたら。

あたしはボスの事を殆ど知らない。

いつも話すのはあたしの方で、ボスはそれを聴いてる感じ。
だから、今日はボスの 話を聴きたいの。
「ね、ボス。」
「ん?」
「あたしの話ばっかり、つまんないでしょ?」
「そんな事ねえ。」
「ボスの話も聴きたい。」
「特にねえ。」
「なっ…、なんか思い出して〜!」
「思い出しはしねえが…」
「なにっ?!」
「俺はてめえが、“チン”
ちょうど、最上階についたらしい。
「っは。なんでもねえ」
そう笑って、彼はエレベーターを降りた。

やっぱりあたしはボスの事をなにも知らない。

知りたいと思うのに。
あたしはただの暇つぶしに過ぎないらしい。
そう考えたら、今まで幸せだった心が妙にざわついた。

次の日、エレベーターに乗る足取りは重い。
こんな曖昧な関係。
いつまで、。

そんな事を考えていて、今日のボスとの会話は、うわの空だった。
最上階に着き、
「お休みなさい、」
といつものように声をかけると、ドアが閉まる前に、ボスが口を開いた。
「手、出せ」
「えっ?」
「姫が望むなら、好きに使え。」
そして、ドアが閉まる。
一瞬の出来事だったから、わけわかんない。
とりあえず、なんか握らされたから、それを確、認す…

あたしの手に握らされていたものは、
ボスの部屋の合鍵だった。

ボスに言いたいことがあったけど、まあいいや。
明日からは、いつでも逢えるから。
真夜中のシンデレラ
(いつかあたしを、)
(シンデレラにしてね)



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