今日はずっと、XANXUSの機嫌が悪い。
こんなの、よくある事なんだけど、あたしにあたった事は今日までなかったのに。今日はなぜか、あたしにまで冷たい。
「…ねえ、ボス」
「…」
「あたし何かしたっけ?」
「うるせえ。」
ずーっとこの調子。ほんとに、何も心当たりがないんだけど…
「はあ…」
こういう時は、沈黙に限る。きっとその内、機嫌も直るだろう。
「ゔぉ゙ぉぉい!」
「あ、スクアーロ!」
よかった。救世主!この気まずい沈黙を唯一、空気を読まずに打破できる人物。ありがとう!
と、書類を渡しに来ただけのスクアーロにひそかに感謝する。
「姫、さっきベルが探してたぞ?」
「わかった。後で行ってみるわ〜」
この重い空気を察知してくれ、スクアーロ!
できるだけ長くここにいてもらうために、あらゆる手段を尽くす事にしてみる。
「スクアーロの髪さらさら〜」
「そ、そうかぁ?」
「うん!めっちゃ綺麗…ずーっと触ってたいな〜」
さりげなくスクアーロがここにいられる口実を作る努力。黙って眉を顰めるXANXUS。
「毎日どんな手入れしてるの?」
「別になんもしてねぇぞぉ…」
「え!いいな〜いいな〜綺麗!」
「そんなに良くねぇぞぉ゙」
「じゃあ、あたしにちょうだ「おい。」
うわお。
…めちゃめちゃご立腹のご様子。ちょっとやりすぎたかな…
「てめぇら付き合ってんのか。」


……はい?!?!?!?!?!
「え?!」「あぁ゙?!」
見事に二人ハモって、“?”マーク。
「付き合ってんのか。」
もう一度あたしとスクアーロを交互に見ながら言うXANXUS。
「…え、待ってよ。あたしが付き合ってんのって、あなたじゃなかったでしたっけ?」
よく考えてみよう。
あたしが付き合ってるのは、彼だよね、うん。
「っは…そうだったな。」
鼻で笑い全て終わったような涼しい顔で、また書類に目を戻すXANXUS。
今のはなんだったんだ。
……。
あたしとスクアーロが沈黙で、彼を見つめていると、しぶしぶXANXUSが口を開いた。
「夢を見た、」
「…?」
「てめえとカス鮫が付き合ってる夢を見て、一瞬真実かと思ったが…」
夢、ですか。
「姫は俺から離れられるわけがないからな。」
さらっとこう言い、また、満足したような笑みを浮かべ、仕事に取りかかった彼。スクアーロは、半分呆れて部屋を出て行った。
今日の機嫌が悪い原因はこれでしたか。
ふぅ、全く手のかかるボスだ。
そうしてため息をつこうとしたら、XANXUSがチラッとあたしの方に目を向けた。
「はなから、てめえを離すつもりなんてねぇけどな。」
そう言って、っは、と笑った。
わがままで自己中で手のかかるXANXUS。
あたしは、
どうしてこんなに、
好きなんだろう。
そう思った。
夢の中でも
(あなたの、)
(彼女がいいな。)




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