「…ねぇ、ボス」
「あ?」
「なんでボスの上にベスターがいるの。」
最近疑問に思う事一つ。
あたしの特等席であったボスの膝の上が、最近、ベスターに占領されている事。
「別にいいだろ、居たって。」
よくない。と言いかけた言葉を飲み込む。よくないよ、絶対よくない。だってそこ、あたしの席だもん。
「ベスターばっかずるい。」
ソファーに深く腰掛けるボスとベスターの傍らに立ったまま、あたしがそう言うと、ボスは呆れたようにため息をつく。
「あたしの席だもん。ボスの膝の上。」
「誰の席でもねえぞ。」
う…。
「ずるいずるいー!ボスはあたしよりベスターの方が好きなの?」
馬鹿みたいだな、あたし。ほんとは、ベスターの事だって、大好きだ。ふわふわしてて気持ちいいし。背中に乗っけて、遊んでくれるし。大好きだよ、ベスターも。でもボスに可愛がられてるベスターは、ちょびっとだけ嫌い。性格悪いよね、あたし。
「大人気ねえぞ。」
「だって大人じゃないもん。」
「あ?」
「子供だもん。」
「ガキは嫌いだ。」
…ひっどい。それ、あたしの事、嫌いって事ですか?え?
「もういいもん」
知らなーい。もう知らないんだから。ボスなんて、ベスターとずっと一緒にいればいい。ずっとずっとずーっと。ボスは、膝に乗せるのは、別に誰でもいいんだ。あたしだけだと思ってたのに。
「てめえ…」
「ボスなんて、もう知らない」
そう言って部屋を出ようと、ドアへ向かう。ベスターに、やきもちやいて、馬鹿みたいだけど。ほんとにガキだけど。好きなんだもん、ほんとは。
素直じゃないあたしに嫌気がさす。
「待て姫、」
無視無視。今日だけは待ってなんかあげない。あたしがここを出て行くのが嫌なら、ボスが止めに来ればいい。ふん。
そう思いつつドアノブに手をかける直前に、ボスに腕を引っ張られて、キスををされた。
「…っ、ちょ…や…っ」
荒々しいキス。きっと、めんどくさい女だって思われてるだろうな。嫌だな。
「いいか、よく聞け。」
「…はい。」
どうせ怒るんでしょ、ベスターと自分を比較すんなって。もっと大人になれって。
嫌々ながら、ボスの方を向くと同時に、ボスが口を開いた。
「…俺が愛してんのはてめえだけだ。」

ベスター。無駄なやきもちやいて、ちょびっと嫌いになって、ごめんね。あたし、愛されちゃってます。
特等席は誰のもの
(あ、またベスター乗っけてる!ずるい!)
(まだ言ってんのか)
(違う!あたしにもベスター貸して!)
(あ?)
(ボスだけずるい!ベスターふわふわで気持ちいいもん。ずるいよ、貸して!)
(…ベスター、匣に戻れ)



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